セラ過去話

「俺の過去?特に面白みもねぇ普通の話だぞ?…まぁ、お前らが聞きてぇなら話してやるよw」


俺が生まれたのはそれなりに裕福な貴族の家だった

一応血は薄いが吸血鬼の血統らしい…ちなみに俺は元祖還りで例外的に血が濃いみたいだな

とはいえ何か特別な事がある訳では無かったし家族仲も良かった、親戚と仲が悪かった訳でもない…まぁ、要するに少し豪華なだけで普通の生活をしてた


彼奴に会うまでは……

俺は元々研究者や開発者に興味があったしその分野の勉強も得意だったしな!

そこ、嘘だろみたいな顔すんな…失礼だろw


だから資格取得や知識を詰め込めるだけ詰め込んでいく日々を送った

それを見た親戚の1人が頑張りを評価してくれて自分の助手をしてくれないかと誘ってくれたんだぜ

その時はとても嬉しかったのを未だに覚えてる

それが彼奴と出会うキッカケだった

研究所とは聞いていたが実際どんな事をしてるか、なんてその時の俺は気にして無かった

助手として現場を見れる事の嬉しさで聞くのを忘れてたからなぁ…

施設長に中を紹介された後、最高傑作の実験体を見せたいと半ば強制的に地下のある一角に連れていかれた

そして一際目立つ突き当たりにある檻の中に"彼"を見つけた

12〜14歳くらいの少女…いや少年が光の無い瞳を虚空へと向けていた

どうやら最高傑作というのはこの子の事だったようだ、それを信じたくは無かった、

元々俺自身は人体実験や錬成には否定的だった

倫理観の無い研究が嫌いだったからな…

でも彼を見た瞬間に何となく強い子だなと思った、目に光は無いのに諦めないという意思の通った瞳をしていた


それからしばらくは怪我をして戻って来て、檻の中に着いた途端に糸が切れたように倒れ込む姿を何度か見ていた

いや、俺は見ている事しか出来なかったとも言えるか…

手を貸せば自分に処罰が下ると、それ以上に彼に危害が及ぶのを恐れていたのかもしれない

そんな思考を巡らせている内に彼が檻を抜け出しては親戚の研究室へと足を運んで来るようになった

最初の内は怪我だらけの身体を親戚に抱えられて入って来たから驚いたな…

隅の方で震えていたが何度か連れられて来る内に自分の足で来るようになった

半年もすれば慣れた様子で入って来てはソファーに寝そべったりとのんびり過ごすようになってたな

それに伴ってだんだんと表情が豊かになって、年相応な無邪気さを見せるようになった

とても嬉しかった…いや…少し心にモヤモヤとしたものがあったな

おそらくだが、彼がその無邪気さや笑顔を向けるのは俺ではなく親戚にだったからだろう…

どこか無意識に嫉妬していたんだと思う、勝手な片想いってやつだなw

それでも彼奴が認識してるかは別として親戚を恋愛的に好いている事はすぐに分かった、同じく親戚も彼を好いていた事も

ここで俺の初恋終了…w

彼奴と親戚の年の差はそこそこあって、低く見積もって10〜15歳差くらいだったな

親戚はそれを気にしてか好意を伝えないという両片思いになってるのを見て

[マジで…もうくっ付けよお前ら…両片思いしてどうすんだ…]

とか思ってたの思い出したわw

そこら辺からは嫉妬というよりもどかしさが強かったんだわ、あからさまにお互いが気になってんのに中々くっつかねぇのw


それからしばらくした夕暮れ時にあの事件は起こった

その日俺は研究論文を評価されて少し遠くの学会へと出かけていた為詳しくは知らないんだが、学会の帰りに急な伝令があり、彼が暴走したと伝えられた

そしてその中で親戚が亡くなり、彼は施設を半壊させた後行方不明になった事を聞き、俺は急いで施設があった場所へと戻ったんだ

そこにはお世辞にも施設と呼べる状態では無いほど無惨に崩れた残骸があった

そして足元に気を付けながら歩を進めると親戚が大事にしていた俺と彼、本人の3人で撮った1枚の写真立てが地面に落ちていた

割れたガラスで手が切れるのも気にせず咄嗟に拾い上げた

その写真だけは無くしてはいけないような気がして、懐へとしまった

その後は家へと戻り、喪失感の中持ち帰った写真を見てはもう一度彼に会いたい、声を聞きたい…と空に願う日々を過ごした


ある日、その願いが突然叶う事になった

貴族の集まりの際に彼奴らしき人影を見つけたのだ

そしてその人影を連れた貴族がこちらへ近づいて来るとそれは確信に変わった

成長とメイクや服装もあり大人っぽくなっているが間違いなく彼奴だった

なぜドレス姿なのかはさておき…

久しぶりの再開に胸を躍らせた

しかし声をかけようとした時気がついてしまった、再び彼の瞳が光を無くしている事に

二度とさせないと(勝手に)誓った暗い表情をしていた

何となく今度は彼を助け出さないといけないと思い、勇気を振り絞って両親へと初めて我儘を言った


両親は困った顔をしていたし教育係の大人には"我儘を言うな"とか"両親を困らせてはいけない"と怒られたがそれ以上に今度こそ彼を助け出したいという強い思いで、施設であった事、又聞きでしかないけれど彼の過去を知っている自分が何も出来ないのは嫌だと強く反抗した

両親は彼の過去を聞いた途端に保護しようと言ってくれた

それから相手の貴族に相談しに行ったが両親との交渉中貴族は渋っていたようだ

俺はその間彼の部屋に居た、そしてずっと黙っていた彼から衝撃の追加情報が告げられた

この部屋に軟禁されている事、命令に従わないと躾をされる事……ここから逃げ出したい事

それを聞いた俺は咄嗟に彼奴を抱きしめ、それなら自分の弟になってくれないかと提案した

もちろん嫌なら振りほどいて断って良いと、彼の気持ちを尊重すると伝える

彼は少し戸惑ったように目を瞬かせると同年代より細い腕をそっと回して来た

「その…こんな僕で良いなら…お兄ちゃんになって…ください…」

…か細い声だった、他の音が聞こえれば消え入りそうなほどに…だからこそ彼の心が限界をとうに超えてしまっている事が伝わって来た

少しでも刺激を与えれば脆く崩れてしまいそうな彼奴の頭を優しく撫でると遠慮がちに身体を預けてきてそのまま眠りに落ちてしまった

両親が部屋に来た頃には彼は熟睡しており、連れ帰る事が決まった為そのまま俺が抱えて帰る事になり、あまりの軽さに心を締め付けられながら帰路を辿る


初めは空き部屋のベッドに寝かせる予定だったようだが俺の希望で同じベッドに寝かせた

どちらにせよその日は寝れる気がしなかったし、そもそも両親からの質問攻めでいつの間にか朝になっていたのだ

日が登った事で、そろそろ朝食にするかという頃に丁度、彼が部屋からおずおずと出てきた

どうやら匂いで俺の部屋だと認識したのか俺を探しに出ようとしていたようだ

近寄ると少しビクッとするが俺だと分かると駆け寄って来た

とりあえず朝食にしようかと彼の手を引き食卓へと迎え入れた

そういえば名前を聞いていなかったな…と思い両親が名前を聞くと彼は

「名前…?えっと…レオ…ン…僕の名前はレオン…です…」

そう両親に言って俺にだけ聞こえる声で

「……君はアローさんと一緒に居たから名前知ってるんじゃないの?…まぁ1800番とかレオの方だろうけど…」

苦笑を返すと困ったように"改めてよろしくね、セラ兄"と微笑まれた


「こんな感じか?とりあえず俺の過去話はこれで終いだぜ」

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