お隣の推し(29歳独身雑談系Vtuber)が死ぬほど炎上している件

阿賀岡あすか

プロローグ お隣は推しのVtuberの中身だった件

 

 今日あった出来事を出来る限り端的に分かりやすく説明するとなると、


・お隣さんがVtuberの中身だった。

・しかも絶賛ネットでトレンド入りするほど炎上している僕の推しだった。

・しかもしかもヤケ酒で自殺しようとしていた。

・なんやかんやあってお隣さんの部屋にお泊りすることになった。

・あとたぶん、僕のことを女性と思っている。


 ……という、他人に必死に伝えてもこれっぽっちも信じてもらえないであろう怒涛過ぎる日だった。怒涛過ぎて脳が理解を拒んでいる。


 正直、一日経った今でも起きた出来事が鵜呑みに出来ていない。明らかに冷静じゃない。胸に手を当てなくても心臓の音が分かるくらい鼓動がうるさい。もう夜中の二時だというのに、眠気なんて欠片も感じない。火照った額はじんわりと汗ばんでいる。


 ……どれもこれも、こんなドキドキしているのは――ベットを占拠して涎を垂らしながらスヤスヤ眠る彼女のおかげです!


 畜生! 何でVtuberなのにこんな見た目もいいんだよ! 僕が漠然と浮かべていた推しの中身の想像よりもはるかに美人で、正直このまま近くにいるだけで好きになってしまいそうだ助けてくれ! 頼む! 僕は推しの話を聞くだけの壁でいたいんだ! 油断しきった彼女の顔を見ると必死に抑えている欲があふれ出そうで怖いんです! 


今だって――おっと彼女が掛け布団を蹴飛ばしたせいでシャツの隙間から零れそうな胸が露出したので慌てて目を反らす。くそっ! 泊めた本人は僕に欠片も警戒せずにすやすや気持よさそうに眠っているのが何だか不平等に感じる! これが年の功というやつなのだろうか。


 ベットは彼女が独占している。せめて横になれるソファでもあれば話は違うのだけど、座布団を背中に敷いただけは寝ようにも眠れない。


 最後の手段として推しのVtuberの中身が眠るベットにお邪魔する――は流石に無理過ぎる! 今でもギリギリの所で踏みとどまっている自制心がどうなるか分かったもんじゃない。


 ……だけど、きっとお隣さんは一緒のベットで眠ることを想定して泊めてくれたんだよな……。


 どうする? マジでどうする?

 あるいは今日こそ馬鹿になる日なのじゃないのか……?



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