令和のガンマン

星乃 望夢

プロローグ

 あらゆる仕事が機械へと置き換わっていく令和という時代。


 軍隊にしてもドローンやロボット犬といった物や、戦闘機や戦車でも今は無人で遠隔操作。


 何でもかんでも機械に置き換わり始めている。


 人の死なない戦争──血を流さなくなるというのは良いことだろうが、痛みを忘れてしまえばそれは資源や金がある限り際限なく戦い続けてしまうだろうという危険性がある。


 戦争をゲームの様に捉えてしまうことさえするかもしれない。


 人間は戦うからこそ美しく貴い。


 一言で言うのならば、その様な戦争はエレガントではない。


 それはさて置き。


 ガンマンという、今ではアニメくらいでしか聞かないだろう職業を生業とする俺も、令和という科学万能の時代を生きている。


 昔は良かった。


 懐古厨だとか時代について行けない老害だと言われるだろうが、腕っ節ひとつあれば食いっぱぐれる事のない時代だった。


 とは言え、俺だってまだ30代になったばかりだ。


 ただここ二十年ちょっとで馬鹿みたいにコンピューターは進化して、今やAI万々歳の時代だ。


 そのAIや機械を使って精密な射撃をしてくる軍事ドローンやロボット犬。


 そこらにある3千円とか5千円とか1万円前後のドローンに爆弾を括り付けて特攻させれば費用対効果抜群のちょっとした神風爆撃機の完成となるのだから、世の中何が新しい武器になるか分かったもんじゃない。


 そんな今という時代に、ただ銃を撃てるだけというのはなんのステータスにもならず売れなくなって行った。


 いや、本当にただ銃を撃つだけならそんじょそこらのゴロツキにだって出来る。


 それこそ、そこら辺の子供に銃を渡して撃たせる事だって、銃を撃てるという字面は成立するが、俺が言いたいのはそういう事じゃない。


 ガンマンという、早撃ちや曲芸撃ち、百発百中の凄腕。


 そうした人間を指して、銃を撃てるだけという。


 そして、銃を撃てるだけでは食っていけないというのは、銃を撃つのが何よりも優れているガンマンですら、飯のタネには困るご時世となった事だ。


 なんせ機械にやらせちまう方が下手なガンマンを雇うよりも正確で命中率も高い上に、機械だから失われても同じ性能のものを直ぐに用意出来る。


 これが人間だとそうはいかない。


 人間だから能力はピンキリだ。


 そして失われればそれまで、同じ腕の人間など居ない。


 代わりを用立てても、その代わりが前任者と同程度とは限らない。


 優れているかもしれないし、劣っているかもしれない。


 そうした意味でも、同じ能力で安定した戦力と能力を保証する機械が求められるのも無理はない。


 ただ人間が機械に勝てる部分は、実は山程ある。


 機械はスペック通りの能力を保証するが、人間はスペック以上の能力を発揮することもある。


 火事場の馬鹿力やゾーンと言ったもの、そしてひらめきや機転は機械には存在しない。


 機械は対策されたら弱い。


 それこそ遠隔操作ならば電波撹乱。


 有線式でもその有線を切るか、EMPでも打ち込んでやれば機能停止に追い込める。


 ロボットは確かに便利だが、万能ではない。


 人間には人間にしか出来ない事がある。


 話が逸れた。


 時代と共にガンマンという存在は必要とされなくなって行った。


 西部開拓時代ならば用心棒や保安官などしこたま居ただろう。


 しかし保安官は警察官へと置き換わり、そして用心棒というのは裏社会にその居場所を移した。


 裏社会でならガンマンは生きていられた。


 しかしハイテクと科学万能時代、そして今のAI技術の進歩で金さえあれば安定して数を揃えられて一定水準の能力を保証する機械へと戦力を置き換える裏社会の連中も増えて行った。


 なにより機械は人間と違って裏切られる心配が殆どないからな。


 殆どと付けているのは、時にハッキングやウィルスで使い物にならなくなるし、さっきも言ったが、電波撹乱や電磁パルスでも打ち込まれればそれでも使い物にならなくなる。


 対して人間は裏切りの懸念こそ拭い去る事は難しくあれ、そうした機械の弱点は何一つない。


 最も人間は能力がピンキリとはさっきも言った通りだが。


 俺も、時代の移り変わりと共に様々な物に手を出してきた。


 それこそ撃てる物なら何でも撃ってきた。


 拳銃に始まり、マシンガンやアサルトライフル、軽機関銃から重機関銃、スナイパーライフルに対戦車ライフル、バズーカ、迫撃砲──。


 武装トラックや装輪車に戦車、船にヘリに戦闘機。


 ありとあらゆる銃器を撃って、ありとあらゆる乗り物を乗り回してきた。


 やれる事を増やしていかないと直ぐに食いっぱぐれるからな。


 そして、やれることが多いということはそれだけ窓口が広く、舞い込む仕事も多くなる。


 それでも、あくまでも俺はガンマンとして売っている。


 俺は別に銃が撃ちたくてガンマンをしてるわけじゃない。


 それこそただ銃を撃ちたければ金を払って射撃場で撃てば良いだけだ。


 俺という人間が、コレでしか食べる術を知らなかったからだ。


 俺は小さい頃に親に捨てられた。


 金に困った親が、俺を売っ払ったわけだ。


 流れに流れて、気づけばアメリカはニューヨークに居た。


 そこで俺は、まぁ、色々とあって気づいたら銃がお守り代わりだった。


 力と金こそ全てのアメリカの裏社会での生活は色々と苦労はあったが、なんとか乗り越えて来た。


 銃を撃つしか能のない俺は、必然的にガンマンとなった。


 これでも暗黒街で1、2を争うガンマンと呼ばれてきた。


 まるでマンガだ。


 ただ、それでも良い。


 俺がガンマンになったのは、確かに銃が唯一絶対の力だったのもある。


 でもそれだけじゃない。


 とあるガンマンへの憧れもあったからだ。


 だからガンマンになった。


 用心棒やボディーガードを生業とした。


 時には殺し屋や掃除屋もやるにはやった。


 生きていく為にはそうする他無かった。


 月日は流れて名が売れていけば、必然的に纏わりつくのは腕試しとか同業者のやっかみとか罠とか色々だ。


 そういうのが煩わしいから静かに暮らせる日本へ引っ越した。


 もし、俺の腕が必要だってんなら日本に来な。


 後悔はさせねぇよ。





to be continued…

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