玄関ポスト

以下のエピソードは、かつてインターネット上で配信されていたWeb番組である『大逆転!地下からの脱却!』上にて取り上げられたものである。同番組はタイトル通り、所謂地下アイドルとしてあまり日の目を見ていないアイドルをゲストとして招き、新しいブレイクのきっかけをつかませる事を目的として製作されていた。実際にこの番組をきっかけにしてブレイクを果たしたアイドルやタレントもおり、結果的には成功を収めたと言えるバラエティー番組である。

この番組の中では、ゲストとして出演した人物が自身のエピソードを紹介するという恒例コーナーがあり、次に紹介するエピソードもまたそんな流れの中で紹介されたものである。

※以下、話を展開するゲストアイドルを瀬奈、聞き手となるメインMCを関川と表記する。


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関川「それじゃあ瀬奈ちゃん、さっそく持ってきてもらった話を聞かせてもらおうか。結構怖い思いをしたんでしょ?」

瀬奈「そうなんです関川さん…。これはまだ家族にも話ができていない話なので、完全に初公開です…」

関川「それは気になるねぇ…。事務所にもまだなの?」

瀬奈「ま、まぁ…。事務所はあってないようなもので…」

関川「はっはっは、なるほどね。それじゃあお願いします」

瀬奈「はい。私、先輩に勧められた新しいアパートに最近引っ越したんですけど、その前はかなりボロいアパートに住んでいて…。そこでの話です」

関川「うんうん」

瀬奈「私、ご覧の通り売れてないアイドルなんで、当然スケジュールなんて埋まってないんです。予定のほとんどはバイトで埋まってて、レッスンとか練習とかはほとんどなくって…。その上さらに、あの時はコロナ禍になっちゃって、バイトの予定も次々にキャンセルになって…。だから、ほとんどアパートにいる時間になってたんです」

関川「あぁ、そういう時期かぁ。無理もないねぇ」

瀬奈「それで、ずっと家にいることになるんですけど、そうすると周期的に変な視線を感じるようになって…」

関川「えぇ…?霊的なやつ…?」

瀬奈「いえ、完全に人間の視線を…。それも、今までバイトで家を開けてた時間に限って視線を感じるようになって…」

関川「うわぁ…。狙われてるって…」

瀬奈「前のアパート、ボロかったって話さっきしたんですけど…。玄関の前にポストあるじゃないですか?あれがもう錆びてダメになっちゃってて、外からでも取っ手をめくれば細目に部屋の中の様子が見えるんです…」

関川「ちょっとまって、完全に欠陥じゃん…」

瀬奈「ただそのぶん家賃も安かったんで、もちろん文句なんて言えないんですけど…。たぶんそれで、視線感じてたんだと思うんです…」

関川「それは怖いねぇ…。何事もなかった?」

瀬奈「えっと…。反応したらよくないかなって思ったんで、気づかないふりしてたんです。人の姿が見えたわけでもないので、私の気のせいって可能性もありますし…」

関川「なるほど…」

瀬奈「でもそうしてたら、今度は変な電話がかかってくるようになって…。電話が鳴って出てみると、「石を探してる」とか言ってくるんですよ。その声も、男の人だったり女の人だったり、若い人だったりお年寄りの人だったり…。、さっぱり意味がわかなないんですぐに切ってたんですけど、何回も何回もかかってきて…。設定で着信拒否しようとしたんですけど、備え付けの電話機がけっこう昔の奴で、着信拒否のやり方もよくわからなくて…」

関川「説明書とかもないだろうしねぇ…。それは困るねぇ…」

瀬奈「電話がかかってくるたびに、私はオーディションの電話じゃないかなって期待して出るんで、その度にがっかりして…。そんな事が何回も何回も繰り返されていくうちに、なんだかイライラしちゃって…。ある日、私言い返しちゃったんです。「そんなの知らないです、もうかけてこないでくだい!」って」

関川「おお!言ってやったね!」

瀬奈「そしたら、その後向こうは急に静かになって…。何も言わなくなったんです」

関川「瀬奈ちゃんの声が聞いたのかな?」

瀬奈「そしたら、れからしばらくは電話もかかってこなくなって、視線も感じなくなりました。やっと迷惑な人から解放されたって喜んでたんですけど…」

関川「その言い方は、もしかして…」

瀬奈「はい…。それから数日後、私珍しく歌のレッスンが入ってて、その後バイトも行っちゃったんで帰りが遅くなっちゃって、日付回るか回らないかくらいになって…。でもかなり疲れちゃってたんで、ベッドに入ってそのまま寝ちゃおうって考えてたんですよね。家に入って、すぐにベッドに潜って、そしたら案の定すぐに眠気が気て、寝ちゃったんです」

関川「うんうん…」

瀬奈「そしたら…。たぶん、夜中の2時くらいだったと思うんですけど…。いきなり電話が鳴り始めて…」

関川「そんな夜中にかけてくる時点で、普通じゃないもんね…」

瀬奈「それで起こされたのも嫌だったですし、もう無視してやろうって思って、放っておいたんです。こんな時間に仕事の大事な連絡が来るはずもないし、どうせ出たってまた意味の分からない事を言われるだけだしって思って…」

関川「それでそれで…?」

瀬奈「でも、向こうは何回も何回もかけてくるんです…。私が出るまでかけてきているみたいな…。でも私も出るの嫌だったんで、絶対出ないって決めて、布団にくるまって…。それがどれだけ続いたか分からないですけど、最終的に電話が鳴りやんだんです。やっとあきらめてくれたって思ったら、その瞬間、玄関の方から「なんで出ないの?」って声が聞こえてきて…」

関川「っ!?!?」

瀬奈「その時私、ほんとびっくりして…。反射的に、玄関の方を見ちゃったんです…。そしたら、玄関ポストの隙間からこっちを見てくる両目がはっきり見えて…。夜中で真っ暗なのに、その目だけははっきり見えました…」

関川「!?!?!?」

瀬奈「その後は…。気を失っちゃたみたいに覚えてないんですけど、朝になっちゃってて…。その人もいなくなってて…。それで、すぐに今の場所に引っ越しを決めたって感じです…」

関川「いやぁ…。かなりハードでえぐいエピソード持ってるねぇ…。こういう経験をしちゃえるっていうのは、将来もしかしたらかなり大物になっちゃうんじゃないの??」

瀬奈「ほ、ほんとこわかったです…」


――――


以上がそのエピソードの内容である。この番組の配信後、瀬奈という女性は自身のSNSアカウント上で以下のような投稿を行っている。


――――


@SenaLover

やっぱり私も平山町に入ります


――――


なお、このWeb番組はその後”制作会社の都合”という名目的な理由で配信終了を迎えることとなった。終了に至った直接的な理由は発表されていないが、配信後に起こった瀬奈氏の失踪がその理由なのではないかと噂されている。

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