黄昏の鯨

付喪紙 洸(ホノカ)

黄昏の鯨

ふと顔を上げる

広い世界に目を向けてみる

一匹の鯨が空を飛んでいた

そんな黄昏時の無人駅


夕日に照らされる

完璧な曲線を描く鰭

世界を優しく俯瞰する眼

傷一つ付いていない畝

どれをとっても耽美であった


鯨は黄昏と共に去った

静寂と虚しさが残る私と月夜

月夜に照らされる

青白い腕

隈を纏った瞼の重い眼

キラリと光る脆くなった爪

月夜は全てを見透かす


月夜が照らす

無人駅の跨線橋

こびり付いて取れない赤黒い錆は

私の心を写しているとも思えた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黄昏の鯨 付喪紙 洸(ホノカ) @Tukumogami_Honoka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ