僕の恋が実るまで

さな

第1話 再会

「羽瑠ー」

入学式が終わり、家に着いたとき、名前を呼ばれた。

6年前より少し低くなった声。だけど、僕には誰か分かる。ようやくだ。そんな思いを胸に込めて、声の主の元へ向かう。

「入学おめでとう!!大きくなったなー」

そう言って僕の頭をなでなでしながら、にかっと向日葵のような笑顔で笑う。そんな彼に一言僕は言う。

「水宇くん、僕、水宇くんのことが好きだよ。」


4月、俺の2個下の幼馴染が同じ高校に入学してきた。幼馴染といっても再会したのは久々だ。彼は小学3年生の時、親の転勤で引っ越してしまって6年ぶりにこっちに戻ってきた。そんな彼は今俺の隣にいる。俺の腕をがっしり組んで。

昨日の入学式のあと、6年ぶりに羽瑠の家に行ったら…告白された。俺はへ!?あ、ありがとなーと言って一瞬驚きつつも頭をなで続けていたら、急に手首を掴まれて

「誤魔化さないで。僕は本気だよ。明日から覚悟してね。」

と6年前と変わらず無表情で無愛想な彼がにっこり笑った。その時の俺は6年ぶりに会って一段とかっこよくなった彼に内心ドキドキしていた。

これが昨日の出来事。

そして朝、学校に向かおうとしたら家の前に羽瑠が居て、一緒に行こうと誘われた。朝挨拶したときは、いつもどおりの無表情だったから昨日の告白は嘘だったのかなんて思っていたら、耳元で昨日の告白、嘘じゃないよと囁かれた。びっくりして俺は耳を押さえながら羽瑠から距離を取ってしまった。それでも羽瑠は長い足ですぐ距離を詰めてきて俺の腕を取り、学校行こと言われ、今に至る。

そして周りの視線が痛い。だってこいつ入学2日目にしていろんな女の子から声を掛けられている。昨日新入生代表挨拶した影響もあるのかもしれない。声を掛けたくなる気持ちも分かる。表情こそないが頭はいいし、運動もできる、身長も高いし、優しいし、何より顔がいい。もう最高にかっこいい。羽瑠のせいで目立ちに目立って、昇降口まで辿り着く。校舎に入るため、腕から離れようとすると、思いっきりギュッと抱きついてきた。顔をじっとこちらに向け、離れたくないという無言の圧をかけてくる。くそ顔がいいな、と思いつつも授業があるからまた放課後なと言って、何とか腕を取り払い教室に向かった。少しむすっとしていたような気もするが無視しておく。教室に入り友達におはよーと声を掛け席に着く。俺の学校は2、3年はクラス替えがないから友達作りとかしなくていいし、慣れたクラスメイトばかりだから楽だ。荷物を整理していると

「水宇、朝目立ってたな。モテ期到来か〜」

話しかけてきたのは高校でできた初めての友達の慎吾。やっぱり見られてたか。あんだけ目立ってたもんな。

「そんなわけないだろ。目立ってたのは俺の幼馴染のほうだっつの。」

「あれが例の幼馴染くんか。俺朝初めて見たけど、すっげえイケメンだな。」

「だろ!」

「何でお前がドヤるんだよ〜」

いつもどおりの会話をしていると先生が入ってきた。

「席につけー。HR始めるぞ。」

そういって新学期が始まった。


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