硝子玉と錆

@4Kdust

0日目 プロローグ

 「人間という生き物はなぜこんなにも不完全なのか」

古くから多くの哲学者は人間とはどんな生き物なのかを考察してきた。

人の原初は善なのか悪なのか、自分が存在することを証明する方法は…

ある一定の結論が出たものもあるがたいして進んでいないものもある。それほど人間というものは複雑で、多様で、難解だからだといえよう。

 私は現在とある学校に在学中である。学校では一定の回数の授業の後テストを行って理解度をはかり、ときには順位をつける。私の場合その順位が下位何%といった具合で親に叱られるのにびくびくしながら今日も部屋の片隅で課題をこなしている。

 「身から出た錆」と言われるようにこういった一連の自分に降りかかる苦しみは全て自らが生み出したものである。しかしそれを改善したすぐ後には無意識のうちにずるずると元の状態に戻るのである。

 そのなかである日私は雨上がりの夕方に水溜まりに写った逆さまの街灯をみた。こういったものは通りすぎてしまっても何の不利益もない。しかし今の私にはその光景が自分の気力のない乾いた心を潤すオアシスのように思えた。

 私は今まで多くの人間が生み出した複雑なシステムのなかで生きてきた。人間が地球の一部だということは理解できてはいたが実感が持てなかったのだ。しかしこの一件を通じて自然という存在がいかに人間社会のなかに溶け込んでいるか、人間はどれほど複雑な生物なのかを実感した。

 そして私は「一日一美」をスローガンとして「うつくしいもの」をここに書き留めることにした。私の醜いすがたを戒めるのとともに百聞は一見に如かずと言われるができるだけその情景が脳裏に浮かぶよう記そうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

硝子玉と錆 @4Kdust

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ