第2話

第五章:悪徳商法の影


慶一はその日から、自分の周りに何かしらの影が忍び寄っていることを感じていた。あの封筒のこと、そしてあの男の言葉が頭の中で鳴り響いていた。「あなたが探している答えを知っている。」その言葉が、今や重く、恐ろしいものに感じられる。


それから数日後、慶一はあの青年と再び会うことになった。場所は変わらず、あの小さなカフェだった。慶一が席に着くと、青年はいつものように冷徹な目で彼を見つめ、静かに話し始めた。


「あなたの秘密を守るためには、まず自分の周囲の状況を理解しなければなりません。」青年は言った。慶一はただ黙って聞いていた。


「あなたが関わっているのは、単なる秘密ではありません。それは『悪徳商法』に関わる重大な問題です。」


慶一は驚き、言葉を失った。悪徳商法? それは一体どういうことだろうか? 自分はただのサラリーマンで、そんなこととは全く関係がないはずだ。


「悪徳商法とは、人々を騙して金銭を巻き上げる手法のことです。」青年が続ける。「その商法に巻き込まれた人々は、時に法的に追い詰められるだけでなく、その結果、命を落とすこともあります。あなたが抱えている秘密とは、まさにその商法と深い関わりがあるのです。」


慶一は頭の中で何かが弾けた。悪徳商法? 自分がそれに関わっている? そんなはずはない。しかし、どうして自分がこんなことに巻き込まれたのか、その理由がまったく分からなかった。


「あなたがどのようにしてその秘密に関わることになったのか、詳しく聞かせてください。」青年は静かに言った。


慶一は、一瞬躊躇したが、結局その話をすることに決めた。



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第六章:過去のしがらみ


数年前、慶一はある友人から誘われ、いわゆる「投資話」に乗ったことがあった。その友人は、急成長している企業に投資すれば、驚くほどのリターンがあると熱心に勧めてきた。その企業は、表向きは成長しているように見えたが、実際には「詐欺的なビジネスモデル」を運営していた。多くの人々が、高額な投資をしていたが、実際にはその企業の業務内容や利益の詳細について、誰も深く調べていなかった。


最初は順調に思えたものの、次第にその会社の経営が不安定になり、ある日突然、全てが崩れ始めた。慶一はそのとき、既にかなりの金額を投資していた。しかし、企業が破綻する直前に、慶一はあることを発見する。それは、企業の会計データに不正があり、多くの投資家が事実上、騙されていたという事実だった。会社は破綻し、慶一は莫大な借金を抱えることになった。


その後、何度か金融機関や弁護士に相談したが、その問題は思いのほか大きなもので、闇の部分が深く関わっていることが次第に明らかになった。しかし、慶一が何もせずにそのまま黙っているわけにはいかなかった。彼はこの問題を解決しようと必死に動き続け、その結果、知らぬ間に更なる危険に足を踏み入れてしまっていた。



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第七章:追跡者の影


「それがあなたの抱えている秘密です。」青年の言葉が、慶一を現実に引き戻す。


「あなたは、あの会社に投資していたことを知っている人々にとって、最も危険な存在です。」青年は冷静に言った。「そして、その秘密が外部に漏れれば、あなたは生きていられなくなる。」


慶一はその言葉の重さを感じた。悪徳商法――それが今の自分を縛る鎖となり、彼の命を脅かしているのだ。だが、それだけではない。問題の本質は、彼がその商法に関わった結果、重要な情報を握ってしまったという点にあった。もしその情報が外部に漏れれば、さらに多くの人々が危険に晒されることになるだろう。


青年は続けた。「あなたの秘密を守りたいのなら、今すぐに行動を起こすべきです。これ以上、あの商法の闇に引き込まれることがないように。」


慶一は深く息を吸い込み、覚悟を決めた。今、自分が選ばなければならないのは、ただ一つ。あの悪徳商法に関わる全ての事実を暴き、終わらせることだった。


しかし、問題はそれだけではなかった。慶一がその行動を起こすことで、新たな敵が現れることは明白だった。そして、その敵は、単なる商売敵や詐欺師ではない。もっと深い、誰もが恐れるような存在であることを、慶一は直感的に感じ取っていた。



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第八章:暴かれた真実


慶一が最終的にその商法の真実を明らかにしようと決意した時、すでに遅かった。彼の周囲には、目に見えない圧力がかかり、彼を監視する影が忍び寄っていた。そして、誰かが彼の行動を察知し、恐ろしい行動に出ようとしていた。


慶一は、あの日カフェで出会った青年と再び会うことを決意した。だが、その夜、カフェに着くと、そこには青年の姿はなかった。代わりに、一枚の紙切れと、冷たい風が残されていた。


「あなたの選択は、もう遅かった。」


その言葉を見た瞬間、慶一はすべてを理解した。悪徳商法の闇は、ただの商業活動ではなく、政治的、経済的な力が絡み合った巨大なネットワークであり、彼一人の力では到底戦いきれないものだったのだ。


そして、慶一は自分の命が、今まさにその闇に引きずり込まれようとしていることを、ひしひしと感じていた。



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(続く)


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