第27話 脱出3
あれから10から15回ほど日が沈んで上がっただろうか。途中何回かサイレンが鳴る日があったが結局何も起こらず仕舞いだ。もうシャリンの言う通りレジスタンスに期待するのは無理かもしれない・・・。
そんな時、外の扉が開く音がした。なんだ?誰かが入ってくる。監視の兵隊じゃない。
「やあ、章殿、マオ殿」声の主はブラルだった。
「なんだ、憐みにでも来たか?」マオが言う。
「いや、カイバル様を無下にしたお前らにはそんなものはもうない」
大佐の口調が変わる。
「今日は楽しい報告に来たんだ。明日、お前たち二人を処刑する。カイバル様は次が来ると懸念されていたが、お前たちのように待ち伏せして叩けばいい話だ」
「明朝、迎えの者が来る。絞首刑だ。残酷なギロチンでもいいが、我々は文明人なのでね。せいぜい苦しくない方法で殺してやるさ」
・・・とうとう来たか。汚れ仕事は親衛隊の仕事なのだ。このことをカイバルが知らないはずがない。なのに止めないということは奴はこれを許容しているってことだ。
「ふん、私たちの後に来る奴らもきっとお前たちにはつかないさ」
「なら付く奴が来るまで殺すだけだ」
「私は・・・殺さないんですか」シャリンが言う。
「あんたには数式を書いててもらうさ、ここで一生な」
「それは、ちょっと嬉しいかも・・・」
こいつ・・・。
「こんな奴らの味方になったのがお前らの運の尽きだ」
「そっくりそのままお返しするよ」俺は言う。
大佐は何も言わずに牢屋から出ていった。こちらのことなど意に返さないように・・・。
とうとうこの時が来てしまった。俺たちは明日殺されてしまう。でもだからと言って何かできるわけじゃない。脱獄する手立てもない。ならただ待つしかない。
「章、お前落ち着いているな。まだ諦めてないみたいだ」
「マオ、多分今夜何かある。今日は早めに寝よう」
「胸騒ぎか、私も少しする。まだ諦めないでみるか・・・」
どっちが言ったわけじゃないが俺たちは手を握って座っていた。お互いに顔は見なかったが、不安だったのだ、俺もマオも。だが言葉に出すのは癪だった、大佐に聞かれる気がして。だから無言で手をつなぐっていうことになった。
ただ待った。運命の導きってやつを・・・。
俺たちは無力だ・・・
つづく
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