第25話 脱出2

 夜は嫌いだ。日が落ちるとなんか気分が落ちる。特にこんな牢獄じゃな。


 マオは寝ている。シャリンはろうそくの明かりを頼りにまだ数式を書いている。


「シャリンさん、その、そろそろ寝た方が良いんじゃ?昼からずっとやってますよね」


「もう少しだけ。眩しいならろうそくは消しますんで」


「いや、そういうわけじゃなくて・・・」


「じゃあ、大丈夫ですね、きりがいいところまではやります」


 そう言うと、シャリンはまたもくもくと作業に戻ってしまった。ありゃ徹夜するぞ。


 はぁ。4日目も何にもなかった。しょうがないので固い石畳に寝転がる。腰に来るなぁ。



 どれぐらい寝ただろうか。俺は馬鹿でかいサイレンに起こされる。まだ夜なのに。


「またレジスタンスの攻撃みたいです」シャリンが床の数式を見ながら言う。


「ずいぶん落ち着いてますね。今度はやばいかもしれないのに」


「どうせ大した被害は出ませんよ。彼らの無人機の量じゃ防空網は突破できません、せめてあと10倍はないと」


「でもカイバル側は慌ててましたよ。最初の時は軽いパニックになってた」


「対策が確立されたんですよ。親衛隊が一日中機械巨人を飛ばして監視するようになったんです。防空ミサイルの陣地の数も増やしてたし。あんなに接近することはもう出来ないです」


 彼女が言うことは正しかった。サイレンはすぐに鳴りやみ、爆発も機関砲の音も聞こえることはなかった。


 なによりマオが起きてない。奴は危険を事前に察知してた。胸騒ぎがするとか言ってこの前は俺を起こしたのに今回はない。ぐうぐう寝てる。


 混乱に乗じてもしかしたら逃げるチャンスがあるかもと思ったが、そんなに甘くないのだと実感する。レジスタンスの奴らにはもう少し頑張ってもらわないと。


「それにカイバル様はレジスタンスへの報復攻撃をするようですよ。私が捕まる前から部隊を動かしてました。かなりの規模のようです。ありゃ持ちませんね」


 シャリンが淡々という。他人事のように。


「そんな、他人事みたいに・・・」


「冷たい言い方でしたかね、なんかごめんなさい・・・。こんな物言いだから親衛隊に疑われたんですね、きっと」


彼女は乾いた笑いをこぼす。思ったよりも悲観的な人のようだ。それとも夜だからブルーなんだろうか。


「別にあなたの個性ですよ、それは。無理に直さなくてもいいんです、そう簡単に治るとも思えませんし」


「別に直したいわけじゃないですよ」きょとんとした顔。


 何なんだ、こいつ。やっぱり空の住人、いや管理者と関りがある奴らは変な奴しかいない・・・。あれ、それだと俺もやばい奴ってことになる?


 俺はまともだ、少なくてもこの3人の中でなら。そう念じながら俺はまた横になった。

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