第24話 疑惑

「以上がバルマン・バリアルに関しての報告となります」


 ブラルは部下のラスガルの報告を淡々と聞いていた。バルマンの身辺調査に特におかしな点はない。


「杞憂ですよ、大佐。バルマン大佐は情報軍のエリート中のエリートです。そんな彼が裏切り者などと」ラスガルは銀髪をいじりながら言う。奴の癖だ。


「そうですよ、大佐。ただでさえシャリンさんを拘束してピリピリしてるというのに。これ以上誰かに疑いをかけてることが分かったら・・・」


 メルディが言う。こいつは意見も聞いていないのにペラペラとしゃべる。いけ好かない男だ。だが言っていることはまとはずれではない。シャリンは元「そら」の住人だ。そのような人物を我々が拘束してもよいのか。そういった意見は軍だけでなく、あろうことか親衛隊の中でも起こっていた。


「出身地こそド田舎ですが、その後の経歴は全く持って問題ありません。軍学校の成績は優秀、その後の着実にキャリアを伸ばしていますし・・・」


「完璧すぎる。非の打ちどころがなさすぎるのだ。そこが逆に怪しい」


「経歴を改竄したと?そんなことが・・・」とラスガル。


「奴は情報に関してはプロだ。自身の経歴に手を加えることなど簡単だろうさ。彼が軍大学の門をたたいた時、我々はまだ十分な体制を整えられていなかった。多少の無茶は出来たはずだ」


「親衛隊のチェックは万全です。幹部はは経歴に不審な点がないか洗い直しを何度もしています。バルマン大佐も例外ではありません」


「とにかく、再調査だ。出身地が怪しい。私の勘がそう言っている。そこから粗を見つけられるはずだ」


「わかりました。とにかく再調査を行います」


 納得のいっていない顔だ。メルディはにやにやしている。


 ラスガルにはかわいそうなことをしているが、バルマンは黒だ。ブラルの勘ははずれない。カイバル様はブラルのそこを信用している節すらあった。


「しかし、経歴に多少の荒はどんな人物でもありますよ。それを言い出したら、ほとんどの者に疑いの目を向けられますな」メルディがつぶやいた。


 大佐は無視する。


 ここではカイバル様の信用が至上の価値を持つ。ブラルはその信用を自由に操作できるのだ。彼が怪しいと言えばそれはカイバル様が怪しいと考えているのと同義なのであった…。


つづく

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