第4話 初陣2
一機がこちらに近づいてきた。もう一機は俺の視覚外に向かおうとしている。マオと同じ戦法でヤルつもりだろう。どちらかに俺が近づけばもう一方が後ろについて意識外から攻撃を与えて倒す。単純だが有効、そんな感じだ。
鋭い敵意、俺は反射的に剣でガードする。一機が機銃を撃ってきた。回避したが腕に何発か被弾した。
神体は攻撃を事前に察知できるのか・・・。それなら・・・。
俺は機銃を撃ってすさまじい速さで通り過ぎていた一機を全速力で追いかけることにした。一気に加速する。物凄いG。だが俺は必死に食らいつく。多分もう一機は後ろにぴったりついている。体が押しつぶされそうになる。だが何とか、必死で耐える。
来た‼
さっきと同じ感覚。俺は突発的に宙返りを仕掛ける。直後に真下で爆発。後ろの奴のロケット弾だ。読みが当たった。爆発の回避のために奴は上昇。俺と急接近する。狙い通り。交差する一瞬。短いが永遠にも感じられる長さだった。
「くらえ!クソ野郎!」
剣を振りかざす。直撃だ。F15は真っ二つになる。爆発しながら残骸は落ちていく。
殺してしまった。俺は人殺しになってしまった・・・
Gに耐えながら一瞬そんなことを考える。しかしそれは肉体的な苦しさにすぐに上書きされてしまった。物凄い息切れ、ぜえぜえと息をはいたり吸ったりする。なんてGなんだ。考えていた以上だ。俺はほとんどうごけない。もう一機が、もう一機がこちらに向かってきているのに・・・。
「くそ、これはまずい・・・」
考えるだけで神体は動くはずなのになぜか動かない。敵が急接近してくる。なにも対応が出来ない。直撃を受けてしまう。そうなればマオのように殺られてしまう。俺は目をつぶる。クソ、こんな形でお終いか・・・。
しかし何も起きない。なんだ?なぜ?
目を開けるとF15は剣が突き刺さっていた。そのまま火を噴いて落ちる。なんだ?
「見ていたぞ。意外とお前は勇敢じゃないか」
マオだ!
「生きてたのか!」
「そんな簡単に死ぬ女じゃないぞ、私は。神体の方が気を失っていたようだ」
だから返事がなかったのか。
「神体が動くようになったから剣を投げてみたんだ。投げると形が変わって槍になった。どうも使い方によって形状が変わるようだ」
マオは冷静だった。一方の俺はまだ意識がはっきりしない。物凄い汗もかいてる。やっぱりくぐり抜けてきた場数が違うんだろう。
「まて・・・、またなにかくるぞ!」
マオが叫ぶ。確かに光が見える。神体に緊張。また敵だ!
「クソ、息つく暇もない」
数が多い、4つ、いや5つだ。それから煙も見える。あれは・・・。
「マオ、ミサイルだ!捉えた目標にあたるまで追ってくる爆弾が来るぞ!」
「そんなものまであるのか!お前の世界はかなりハードだったんだな・・・」
吞気に言ってる場合か。また戦闘機だろうか。モニターがかってに拡大される。俺の意識を読み取ったようだ。敵は戦闘機じゃない、こっちと同じ人型だ!
とにかくミサイルを防がなければ。剣でガードする。近くで爆発!しかしロッケト弾よりも爆発が小さく、大したダメージは受けなかった。敵はそのすきにもグングン接近して来ている。
「マオ、あれは多分管理者様が言ってた機械巨人ってやつだぞ。こっちより重武装に見える。さっきのミサイルも奴らが撃ったんだ」
「その様だ。散開したぞ。こっちを囲んで倒すつもりだ!えっと・・・なんだっけお前・・・」
こいつ俺の名前覚えてなかったのか・・・。というか管理者様も彼女に俺の事、紹介してなかったかも。まったく適当な説明だ。敵のど真ん中にこっちを召喚するし、もしかして管理者様ってかなり仕事が雑なのか?
「俺の名前は章、藤宮章だ。19歳。よろしく頼むぞ、マオ・マルカさん」
「よし、章。敵に完全に囲まれる前に突破するぞ。敵は前に3,後ろに2だ。数の少ない後ろに仕掛けるぞ。私が敵の態勢を崩す。そこをお前が叩くんだ」
わかったと俺が言うとマオは後方に回り込んだ敵に急接近した。マオの神は剣を失っていたので格闘戦でヤルつもりだ。俺も奴の後を追う。敵は急接近に対応できていない。蹴りが直撃!機械巨人はよろけた。
「いまだ、章!」
マオが避ける。敵からは俺が急に現れたように見えただろう。剣を振りかぶる。倒せる!
だがそう簡単にはいかなかった。後ろで爆発、直撃を食らった!前方に回り込んでいた敵がカバーに入ったのだ。集中砲火を受ける。今度はこっちが態勢を崩された。そのまま敵は追撃を仕掛けてくる。
駄目だ・・・。
やっぱり練度が全然違う。やつら機械巨人の扱いに慣れてる。こんな付け焼刃の即席コンビじゃ太刀打ちできない。
敵が剣を振りかぶる。俺は剣で防御しようとする。しかし行動が読まれていた。一瞬のスキをついて剣が弾き飛ばされてしまう。無防備になった神体に飛び道具が襲いかかる。また衝撃、神体にダメージが蓄積されていく。
駄目だ、これは勝てない・・・。直感的にわかる。
マオは最初善戦していた。格闘戦で敵に食らいつく。だが奴らは、何度か攻撃を食らうとマオの間合いに入らないように距離を取り始めた。彼女が接近する前に飛び道具で集中砲火を食らわせ、ボコボコにする。もう彼女も手も足も出ないようだった。
機械巨人が接近してくる。両手をクロスしてガードの姿勢を取る。しかし俺はドギツイ蹴りを食らう。物凄い衝撃とともに、コックピットが真っ暗になった。
「クソ、やられたのか!」
モニターがすべて消える。そして浮力も消えたようだ。落下しているのが分かる。マオが言ってた神体が気を失っている状態なのかもしれない。
操縦桿を何度も押したり引いたりする。だが意識は戻らない。体が浮かんだ、ジェットコースターで急に落ちていくような感覚になる。
あぁ・・・これはほんとにまずいぞ。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます