我は我らが女神の憂いを滅する者なり。

白井黒猫

第1話

初代教皇による文書


――世界は愛に満ちている。神は人を愛し、人は人を、神を愛する。

 神は人の良き隣人であり、友でもあった。

 そう、あったのだ。

 人は争い、神は世界を去られ我ら人を見守っておられる。

 だからせめて、これ以上神を苦しめるまい。

 人道のもとに、我らルナ教は人を助け、神を待つのだ。

 我らが上、女神ルナが見守るこの世界に栄光あれ――

 

 ルナ教 初代教皇 ルシエル=ルナ



 神聖魔法を知りたければ神殿に行け、学院は一般魔法を扱う場所だ。

 基本的にこの国ではそういったことを言われる…が、それを知らず神聖魔法を学びたいと言って学院を目指す子どもたちはたくさんいる。

 かく言う僕もそのうちの1人だった。

 故に神聖魔法を学びに、神殿へ学院に通う傍らに教わりに行っていた。

 ただ、一般魔法(ただ魔法というだけだとこれになる)の楽しさにも気づき、休まず学院には通い続けている。

 そうして、いつものように学院からの帰りに神殿へと直行している。

 

「おーい、ルナエル!この後神殿か?これ持ってけ!」


 通りにある弁当屋の男が、少年に弁当箱を放り投げてくる。


「おじさん、いつも投げないでって言ってるでしょう。誰か通行人にぶつかったらどうするんですか?」


 このおじさんは、育ち盛りの僕には嬉しいボリューム満点の弁当を毎日作って渡してくれるので本当に嬉しいのだ。


「俺が投げたものが狙いの他に当たるわけ無いだろう。これでも。もともと騎士だったんだぞ?」


 毎度のごとく、自信満々な言動をした男に少年はため息を付く。

 しかし、今まで3年以上ほぼ毎日男は弁当を少年に投げて渡していたが一回もあたってないので本当なのだろう。

 肩を落とし、少年はため息を付くが素直に礼を述べる。


「はぁ…当たらないならいいけどさ。いつもありがとうね、おじさん」

「おう、いいってことよ。出世払いでな!がっはっは!」


 豪快に笑う男に手を振り、少年は走り出した。そして、魔法を紡ぐ。


我ある場所は思う場所テレポート


 少年がどこかに瞬時に移動した。


「こんにちはー!」


 少年は魔法で神殿へと飛び、あたかも歩いてきたように中に入った。すると神殿のシスターが叫ぶ。


「こらっ!魔法でここに来ないの!走って体力をつける!」


 バレたようだった。注意された少年はバツの悪そうな顔で謝る。


「ごめんなさい」


 それを聞くとシスターは頷いて少年やその周りの者たちに声を掛ける。


「さあ神聖魔法の講義を始めるわよ!」




 ――これがこの少年のありふれた日常であり、当たり前であった。たった今この時までは――





 揺れる…世界そのものが揺れ、空間が軋むほどの魔力の偏りが生じ世界が悲鳴を上げる。


「きゃぁぁぁああ!?」

「壁が崩れるぞ!?」

「逃げろっー!」


 一瞬にして街は阿鼻叫喚の嵐となった。

 建物は軒並み崩れ多くの人が瓦礫の下敷きになり、更には火柱まで上がる。


「嘘だろ…っ」


 なんだ、この寒気は。この状況に怯えて寒気がするんじゃない。

 なにか異様な大気に満ちたものを肌で、感じて恐怖している。大気…肌……?魔力か!


「こんな強く、異様でドロドロした魔力を見たことがないぞ…」


 魔力は大気に満ちたものと、人などの生き物が持つものがある。

 生き物が持つ魔力は、その個体の在り方によって、感じられる性質が変わってくる。

 マイナスの面が強いほどよりドロドロとした重い魔力となるのだ。

 ただ、少年が感じた魔力は命あるものが持つことが不可能なほど。


 濃く…重く…ドロドロとしていたのだ。


「化物だああ!?逃げろおおぉ!」


 突然、知らぬ男の叫び声が聞こえる。

 それと同時に先程の魔力の持ち主が、徐々に近づいてくるのを少年には感じられた。


「あれはっ――悪魔っ…」


 神殿に残る古代の資料を漁っていたときに知ったものだ。

 人々の持つ悪意などのマイナス方向の感情を具現化したとされる伝説の存在だ。


 ――そう、伝説なのだ。


「どうしてこんなことに…」


 少年は唇を噛みしめ、立ち尽くす。




 はじめまして、白井黒猫です。

 レール〇ンとかイン〇ックスの白〇黒子ではないです。

 黒猫です。

 さて、この少年ルナエルくんはどうなってしまうのでしょうか。

 おや、女神様の名前と似ているようですね。

 彼には祝福があるかもしれません。



 —どうなるかはまた次回。

 それではまた会いましょう―――――

 p.s.

 この世界は愛で満ち溢れています

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