第2話
「まったく、やんちゃにも程度というものがあるのよ」
平静を装いすっくと立ち上がる。あくまでも澄ましたお姉さん風に余裕を持った雰囲気で。しかし、内心は正反対に、鮮やかギラギラ桃色模様。顔がニヤけるまであと一歩、
だって、しょうがないじゃない。この子、とっても可愛いんだもの。胸がむずむずしちゃうのだって自然な反応。悪戯されたのにむしろ嬉しいし、お返しもしたくなっちゃうんだから。
少女は背丈からして小学三、いや四年生くらいだろうか。
風に揺れる髪はブラウンカラーのツインテール、頭頂部には大きなリボンがちょこんと乗っかっている。口元から覗かせる
下校途中なのだろうか。このまま自宅に連れ帰りたくなる。テイクアウトだ。ひょいと持ち上げお姫様抱っこでレッツゴー。おうちでまったりぐふふふふ……――って、それはいけない。紛うことなき犯罪だ。善良
「あれあれぇ。おねーさんってば、蹴られたのにどーしてニヤニヤしてるのぉ?」
しまった、表情に出てしまったようだ。
これでは女児に興奮する不審者と思われかねない。いや、事実ではあるけども。正体を知られては色々とまずい。
「あ、分かったぁ。痛いことされるのが大好きな、マゾっていう変態さんなんだ。うわぁ、キモーい」
しかし、時既に遅し。
彼女にはお見通しらしく、ケラケラと小馬鹿に
どうやら変態オーラがだだ漏れだったようだ。ショックでがっくり
そもそもの話、見ず知らずの子どもに蹴り飛ばされる状況自体が
そうか、ならば仕方ない。
背水の陣、絶対的ピンチをチャンスに変えてみせよう。すなわち欲望の解放だ。淑女としての我慢はもうおしまい。ここからは気兼ねなくいかせてもらおう。自宅に連れ込みイチャイチャ、きゃっきゃうふふのパラダイスだ……――って、だからそれは駄目なんだって。妄想だけに留めておかないと。それに、あくまでもまだ推測の段階だ。私の趣味が露見した可能性は微量程度。ここは冷静沈着に、彼女が何故私を攻撃したのか聞き出してみよう。
「あら、どこにいったのかしら」
しかし、顔を上げると少女の姿はどこにもなく。乗客のいないブランコだけがキイキイ虚しく揺れている。
どうやら逃げてしまったらしい。
もしまた彼女に会えるのなら、年上としてしっかり
※
そう、
休日。
世間が家族旅行だの恋人とのデートだのと色めき立つ中。私は〈
「わー、キャロンおねーちゃんだー」
「今日も一緒にかけっこしようよ」
「ううん、今日はおままごとするんだよね」
門を越えたすぐ先。保育園の敷地に踏み入れた途端、幼児の群れがわっと
ここにいる全員が〈ワンダスト〉で生活している子ども達だ。
毎週末に訪問し続けてきたおかげでもう顔
好き好んで〈ワンダスト〉に関わるなんて変わり者だ。と、白い目で見られるかもしれない。大半の〈数得市〉民が
追いかけっこで捕まえてほっぺをすりすり。
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