ぼっちの俺、一撃で魔王を倒してしまう
とろり。
第1話 レベル9999
「いえ、いいんです。それより最初の森でお願いします」
ぼっちの俺はギルドのお姉さんからの依頼を断り、いつもの「最初の森」で安心安全の狩りをお願いした。
臆病者の俺は上級依頼で絶対に死にたくないから最初の森でレベル上げをしておこうと考えた訳だ。毎日毎日「最初の森」で経験値と小遣い稼ぎ。貯まったゴールドは日々の生活に充てる。余るゴールドは僅かで、装備を整えることは難しい。だから俺は「ちから」に全振りした。攻撃は最大の防御ってね。
スライムが現れるけど、レベル上げをしているからワンパンで倒せる。時々現れるメタスラは経験値豊富。美味しいおいしい。
けれど、ずっと「最初の森」でレベル上げをしていたからもうおっさんになっちまった。周りの冒険者は結婚だのハーレムだのしているのに俺はいつまで経っても「ぼっち」。誰も俺のことなんか……
「た、助けてぇ~!」
女の子の声がした。急いで駆けつけると、スライムに取り囲まれていた。その女の子は一人で必死にスライムと戦っていた。初心冒険者のようだ。
「お、お兄さん! お助け~!」
お兄さんなんて言われたのは何十年ぶりだよ。スライムなら一発で倒せる。俺に任せておけ。
と、意気込んだがお兄さんは俺の後ろを通りかかったイケメンだった。いいとこ取りのイケメンは女の子をお持ち帰りした。
「けっ」
世の中そんなものだ。女の子はおっさんには興味ない。興味あるのはイケメンだけだ。あと金持ちか?
俺は気持ちを切り替えてレベル上げに勤しむ。
「はあ~あ、このままでいいのかなあ……」
スライムを狩りながら一人呟く。誰も聞きやしないおっさんの呟きは宙に消えていった。
軽快なサウンドが鳴り、レベルアップした。コツコツコツコツとスライムやメタスラを狩り続けレベル9999。「ちから」ステータス999999。
「馬鹿か俺は……」
レベル9999なんて聞いたことない。臆病者の俺はいまだにスライムを相手にしている。一体何を求めているのか自分でも分からない。
今回のクエスト報酬を貰う際、ギルドの受付嬢に提案された。
「魔王を倒せますよ、サトウさん!」
「いやいや無理無理無理無理無理無理無理無理っ!」
「だってレベル9999なんて聞いたことないですし、ちから999999なんて聞いたことないですよ」
「しかしですねぇ……」
「ファイトです!(にっこり)」
少ない報酬を貰うと同時に明日のクエストは魔王討伐に決まってしまった。俺はひっそりと暮らしたいだけなんだよなあ……。あと絶対死にたくない……! だって痛いの嫌でしょっ!?
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