第7話

「仕事どうだった?」



ベッドで逞しい腕に抱かれながらまどろんでいると、翔が不意に聞いてきた。

くるくる大きな瞳が人懐っこい小型犬のようだ。

可愛いと言われるのを嫌がり身体を鍛えた結果、ムダにマッチョな身体に愛らしい童顔というアンバランスな仕上がりになっている。



「んー…まだ初日だからね。何とも言えないけど…普通、かな?」

「普通って…透子らしいな」


翔は笑いながら上半身を起こしてタバコを咥えた。


「セクハラ上司とか、かっこいい先輩とかいないの?」

「セクハラ上司は…まぁ。かっこいい先輩も…まぁ」



いないこともないのかな…?

ふと頭に浮かんだのは、ぶっきらぼうに資料を渡してきた木下浩輝だ。

涼しい目元。デスクに向かう横顔も無表情ながらに綺麗だったと思う。

外見は悪くはない…けど。


「なんだよ。いるの?」

「どっちもいないよ」

「ほんと?透子はモテるから心配なんだよな」


そう言って面白くなさそうにタバコをくゆらせる男の背中を見ながら携帯を手に取る。


「…あ」

「何?」

「ん?何でもない…私帰るね。ちょっと疲れたから明日に備えて寝ておきたいの」

「もう行くの?…まぁ、透子は社会人だもんな…明日も会社だもんな」

「何?拗ねてるの?」


下着をつけながらからかうように笑うと、翔が首筋に顔を埋めてきた。


「からかうなよ。透子と離れたくないんだ」

「ごめんごめん。来年には翔も社会人じゃない。またいつでも会えるよ。電話して」

「するけど…透子から電話くれたことってないよな」

「そう?」

「いつも俺ばっかりが会いたがっているみたいだ」


そんなことないよ。と言いかけた私の唇に彼のそれが重なる。

せっかく着けた下着の端から指を滑り込ませ、まだ充分に濡れたままの紅い裂け目はすんなりと翔の指を受け入れた。


「んっ…はぁ…」


舌を絡ませながら圧し掛かる甘え上手で憎めない年下の男を受け入れ、私はまた切ない声を漏らした。

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