side透子1

第1話

『自分』というものを考えない。

それが当たり前だと思いながら生きてきた。




毎日私を包んでくれた優しい場所が急になくなり、どこか余所余所しく感じる空間に身を置くようになってから。



彼此15年、私はあの日を境に涙を流していない。





もしかして素顔…?と思われる程、薄いメイクを施すのにそう時間はかからない。

今はナチュラルに見える化粧が流行りだという。

あくまで『見える』だけど。

男の人は濃いメイクよりその方が清楚さを感じて好感を持ちやすいらしい。



…なんてどうでもいい話だ。

メイクは表現であり自己主張だとも思う。

それらは私にはあまり必要性を感じられないことだから。

社会に出て働く女性としての最低限の身嗜み程度のメイクをサッサと施して、私は家を出た。

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