ボクとセーコちゃんと新年
「キューちゃんついて! もっとついてー!」
「うん、分かったよ」
「すごぉい! キューちゃん、あついよぉー」
「大丈夫?」
「あぁーん、ベタベタするぅ……」
「はい、これで拭いてね」
「むふふっ、キューちゃんありがと、ねぇ…… もっと欲しいなぁ……」
「うん、ちょっと待っててね」
セーコちゃんは今日も絶好調。
セーコちゃんの欲望はとどまることを知らない。
今もほっぺたのお肉をぷるぷると揺らしながら餅つき機の中を覗き込み、餅が完成するのを今か今かと待っている。
餅つき機を買ってみたので試しに二合分だけ作ってみたが、ボクは一口食べただけで、残りはセーコちゃんがペロリと食べてしまい、まだ食べ足りないというので急遽追加で餅を作っているんだけど……
「まだかな、まだかなー?」
あぁ…… セーコちゃん可愛い……
テーブルに置いてある餅つき機を、テーブルに肘を付きながら覗き込んでいるから…… 餅つき機の振動で、ほっぺたや二の腕、休みということでラフな格好をしているから…… 締めつけのない胸元までぷるぷるしている。
だけど…… この正月でセーコちゃんの神が作りしムチムチ美ボディがプニプニになってきたかな?
正月はお互いに実家に帰省していたんだけど、お互いの実家が近所なので一緒に初詣に行ったり、お互いの家に行って新年の挨拶をしたりと、結局毎日一緒にいた。
正月休みに好きなものを好きなだけお腹いっぱい食べるセーコちゃんの姿も見られたし、今年も良い年になりそうだと思った。
年末年始のセーコちゃんの欲望解放爆食いは毎年の事だから、その後にボクがセーコちゃんのプレミアム美ボディをキープするために栄養管理など頑張れば良いだけの話なんだけど…… 今年はちょっと食べ過ぎだったのかな?
まあ理由は分かっているんだけどね。
今年はセーコちゃんの家にセーコちゃんの姉夫婦や親戚などが集まったから…… ボクと会う時間が減ったせいだと思っている。
人より少ーし欲望に忠実なセーコちゃんは、いっぱい寝て、いっぱい食べて…… いっぱい寝たいんだ。
ただ正月中、その三大欲求の内二つは満たされていたけど、残りの一つがあまり満たされなかったせいで食欲が増したんだと思う。
ボクも実家に兄さんや姉さんがいて、セーコちゃんと会ってはいたが、時間がなくて…… 残り一つの欲求を満たしてあげることが出来なかった。
そのせいでこのプニプニボディに…… ごめんよ、セーコちゃん。
「あっ、もう少しで出来るよ」
「本当!? むふっ、次は何をつけて食べようかなー?」
まあ、プニプニだろうとブヨブヨだろうと…… このセーコちゃんの満面の笑みをすぐそばで見られるなら、ボクは良いんだけどね。
「はふっ、はふっ…… んま、んまっ…… んー! つきたてのお餅、美味しー!」
「良かった、餅つき機を買って大正解だったよ」
「うん! キューちゃん、買ってくれてありがと」
「セーコちゃんの喜ぶ顔が見れるだけで、ボクも大満足だよ」
「むふっ…… キューちゃん、大好き」
「ボクも大好きだよ、セーコちゃん」
そして追加の二合分のお餅もペロリと食べたセーコちゃんは……
「むふふっ、キューちゃん……」
久々にのんびりと二人きりになれたということで、今日のセーコちゃんは甘々モードだ。
ボクのそばをムッチリ…… じゃなくてピッタリくっついて離れない。
「ん……」
朝から一緒にいるが、今日だけで何度キスをしてくれたか分からないくらいキスもされている。
唇がちょっぴりきなこ風味なのがまた可愛いよね。
「ねぇ…… キューちゃん…… 今年はまだ、あけましておめでとう…… してないよね?」
そういえば…… 最後にしたのは去年の三十日だったかな?
『大掃除するから』と実家を追い出されたセーコちゃんとおでかけして、歩き疲れたセーコちゃんと休憩した時以来だ。
あの時は『むふふっ、大掃除してあげる』と、時間いっぱい、隅々まで年末の大掃除されたなぁ……
「そうだったね、じゃあ……」
…………
…………
おぉ…… ボリュームアップしている…… セーコちゃんの名誉のためにどこがとは言わないが…… まるで『鏡もち』みたい。
これは新年早々愛でたい…… じゃなくてめでたいな!
「キューちゃん…… もう良いよね?」
ぷるぷる揺れるモチモチお肉を眺めるには下からのアングルが最高なんだよ……
「姫始めで鏡開き…… しちゃお?」
おふっ! し、しっとりモチモチ鏡もち……
ペッタンペッタンと二人で協力しながらのお餅つき……
こねてはついて、濡らしてひっくり返しは、ついて、ついて…… ペッタンペッタン……
時々豆もちなんかも食べて…… 味変しながらじっくり、たっぷりと時間をかけてモチモチお餅を味わって……
「キュー…… ちゃぁん!」
うっ…… 巨大鏡もちに…… 押し潰されちゃう! あぁ、最高の新年だ……
…………
…………
余程お腹ペコペコだったのか、がっつくように食べたセーコちゃんは、満足そうにボクの隣で横になっている。
「キューちゃん、ありがと…… 大好き……」
「ボクの方こそありがとう、セーコちゃん大好きだよ」
「むふふっ…… ところでキューちゃん? ワタシのお腹ばかり見ていたけど……」
「えっ!? そ、そんな事ないよ!」
お腹だけじゃなくて、あちこち見てはいたけど…… そんな責めるような目で見ないでよ。
「キューちゃんもやっぱりワタシが太ったと思ってるんでしょ!」
「い、いや、セーコちゃんは太ってないよ!」
太っては…… うん、ぽちゃっとしているだけで、太ってはいない!(キューちゃん比)
「うぅ…… やっぱりぃ…… だって、ママやお姉ちゃんがワタシにいっぱい食べさせるんだもん! だからこれは太ったんじゃなくて、太らされたからワタシが悪いわけじゃないの…… これはママとお姉ちゃんによる『太らせ』だよ!」
うん、意味が分からないよ、新しい言葉を作らないでね? 『太らせ』なんて聞いた事…… あれ? ボクがセーコちゃんの美ボディをキープするために頑張っているのは、ある意味『太らせ』なんじゃ……
「悔しい…… でも美味しいから食べちゃうの!」
セーコちゃんは欲望に忠実だからね…… でもそんなセーコちゃんがボクは大好きだから。
「ごめんね、キューちゃん…… ワタシ…… いっぱい食べさせられちゃった……」
相変わらずだけど、言い方がなんか嫌だなぁ……
「と、いうことで…… キューちゃん、ダイエットに付き合ってね!」
「えっ!? ……ちなみにどんなダイエットをするの?」
「むふっ…… 『餅つきダイエット』かなぁー? むふふっ!」
えっ、あっ…… ちょっと! さっき食べたばかりでしょ!?
あぁぁぁーーー!!
餅つきダイエットって……
ボクがセーコちゃんに『食べられ』ちゃったよ……
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