ボクがキミを育てたのに! あんなヤツらに○○られるなんて!

ぱぴっぷ

ボクとセーコちゃん

「セーコちゃん、ボクのおやつ少しあげる」


「えっ!? キューちゃん、くれるの?」


「うん」


「ありがとう! キューちゃん、大好き!」


 …………


「セーコちゃん、もうお腹いっぱいだから余ったボクの分の給食、食べてくれない?」


「えっ!? キューちゃん、これアタシにくれるの?」


「うん」


「ありがとう! キューちゃん、大好き!」


 …………


「ふぅ…… バイト先で余ったケーキをもらったんだけど、いる?」


「えっ!? ケーキ!? 食べる食べる! いつもありがとう! キューちゃん、大好き!」




 …………

 …………




「セーコちゃん、トンカツ食べる? もうお腹いっぱいだよ」


「えぇー!? まだいっぱい残ってるじゃん! 仕方ないなぁ…… むふっ」


 ボクが少食なのを知ってるだろ? ……スペシャルビッグトンカツ定食なんて食べられないよ。



 ボクの名前は江付えづけ久治きゅうじ、ボクは今、幼馴染であるもり盛子せいこちゃんと、大盛で有名な定食屋に来ている。


 少食なのに何故そんな店に来るんだよ! と思うかもしれないが、これには深い理由わけがあるんだ……


「トンカツの端っこが美味しいのに…… あーむっ、むぐもぐっ…… んー! やっぱりここのトンカツは美味しー!! むふふっ」


 パッチリクリクリとした大きな目、スッと通った高めの鼻、お餅みたいにモチモチのほっぺ、丸みのあるアゴのラインと可愛らしい顔していて、身長はボクより高く、片方がボクの頭くらいある大きな胸に、人をダメにするクッションのように柔らかくて太めのお腹や太もも、そんな奇跡の柔らかボディを持つセーコちゃんの体型を維持するために、こうして食事に付き合っているんだ。


 小さな頃から少食だったボクのためにセーコちゃんはボクの分まで食べてくれて、ここまでの奇跡の体型に育ったんだ。

 最後までセーコちゃんの体型を保つのを手伝うのが、ボクの生きがいで使命。


 出るとこはかなり出ているし、全体的なバランスが良いんだよ…… 極太過ぎず、ちょうど良い『ぽちゃっ』具合…… 相変わらず惚れ惚れするボディだなぁ。


「んまっ! んまっ! むふふっ……」


 それに何でも美味しそうに食べるセーコちゃんが…… 凄く可愛くて、そんなセーコちゃんがボクは大好きなんだ。


「口の周りにソースがついてるよ」


「んー? キューちゃん、拭いてー」


「はいはい……」


 あぁ、たまらん! ぷにぷにほっぺにぷっくりした油でツヤツヤな唇…… まるで芸術品のようだ……


 

 そして食事を終えて店を出たボク達。

 肉厚で直径十五センチくらいはあるトンカツを三枚と少し、ペロリと平らげたセーコちゃんは、ポッコリした自分のお腹を撫でながら満足そうに隣に並んで歩いていた。


「セーコちゃん、明日は大学行くの?」


「うん! キューちゃんは?」


「明日はバイトだから、明後日かなぁ」


「キューちゃん、いっぱいバイトをしてるけどお金ないの? 今度からアタシが食事代を出した方が……」


「いや、大丈夫! だからセーコちゃんは気にせずいっぱい食べてね!」


 セーコちゃんは気にしちゃダメ! だって…… セーコちゃんにいっぱい食べてもらいたくてバイトを頑張ってるんだから!


 今度の夏休みは海辺の町に行って、たらふく海鮮を食べてもらわないといけないし…… ああ、セーコちゃんが美味しそうに海鮮を食べる姿を想像しただけで、ボクは…… 


「……キューちゃん、また変な顔をしてる」


「へっ!? い、いつも通りだよ! 失礼だなぁ…… あっ! セーコちゃん、あそこの店でデザート食べていく?」


「デザート…… わっ、フルーツパフェだって! 美味しそう……」


 ふふふ…… そうだ、セーコちゃんは自分の望むまま、美味しい物をいっぱい食べてくれ…… 



 …………



「フルーツパフェも美味しかったぁー! キューちゃんがくれた抹茶プリンも最高だったよー」


「セーコちゃんが満足してくれたならボクも嬉しいよ、さて…… じゃあ帰ろうか」


「うん! ……ねぇ、キューちゃん?」


「どうしたの?」


「今日も…… お家、行ってもいい?」


「……もちろん」


「むふふっ、キューちゃん大好き……」


 そして食欲が満たされたセーコちゃんの別の欲を満たすためにボクの家に一緒に行き、そして食後の運動を始めた。



 ああ、たまらない…… この瞬間のためにボクは頑張ってバイトをして、セーコちゃんにいっぱい食べさせてあげているんだ。

 

 ぷにぷにぷるぷるの唇で全身を味見され、しっとりした人をダメにするボディに包み込まれるように


 ボクもセーコちゃんのずっしり詰まったお肉を堪能し、お互いにお腹いっぱいになるまで食後のデザートを楽しんだ。


「キューちゃん…… 大好き」




 …………

 …………



 大学進学を機に一人暮らしを始めたボク達。

 元々家がお隣さんだったので少し寂しかったが、なんとセーコちゃんが一人暮らしに選んだアパートはボクと同じアパートで隣の部屋だった。


 だから大学進学してもお互いに部屋を行き来していて、それはそれは仲良くしているのだが…… ここ最近、セーコちゃんの様子がおかしい!


 同じ大学だけど学部は違うし、ボクはバイトを掛け持ちしているので、学校ではほとんど会うことがない。

 その代わりに夜は一緒にいることが多いし、二人でちょくちょく外食もしている。


 だが、ここ最近セーコちゃんに外食を断られることが増えてきた。

 

『大学の友達とご飯を食べに行く』とか『ちょっと用事がある』とか、タイミングが合わないのか、二人で出かける機会が減っているように感じた。


 それ自体は友達付き合いも大切だから良いんだけど、問題は……


「キューちゃん、どうしたの? あっ! むふふっ…… する?」


「うん、したい……」


 おかしい! ……セーコちゃんのふわふわマシュマロボディの様子がおかしい!


 脇腹のぜい肉の増え具合、肌のハリ、しっとり感が…… いつもと違う!

 アゴも二重になりかけていて、丸みのあったが消えかけているし、ちょっと肌荒れしているじゃないか!


 せっかくセーコちゃんの健康を考えつつ、美味しい物をいっぱい食べてもらって美ボディをキープ出来るよう管理していたのに…… 


「んっ…… キューちゃん……」


 まさか…… セーコちゃん……


「セーコちゃん、ボクに隠し事してない?」


 最中に思わず聞いてしまったが、面白いくらいセーコちゃんの身体がビクンと反応し、ほっぺたのお肉がぷるぷるっと揺れた。


「べ、別に、隠し事なんてないよー」


「本当に?」


「う、うん、やだなぁー、大好きなキューちゃんに隠し事なんてしないよー」


「……嘘ついてたら、冷凍庫にあるアイスは無しね、せっかく高級アイスの『ザーボンバーダック』買ってきたのに…… 隠し事はないんだよね?」


「ザ、ザーボン…… バーダック…… うぅっ!」


 隠し事をしたってボクにはバレバレだからね? 誰よりもセーコちゃんを愛していて、小さな頃から大事に育ててきたのはボクなんだから…… セーコちゃんの些細な変化も、隠し事だってすぐに分かるんだよ?


 食べたいでしょ? 高級アイス。

 ほら白状しちゃいなよ……


「うぅっ…… ごめんなさい! ごめんなさいぃぃ……」


「最近ボクの誘いを断ってまで、何を隠しているのかな?」


「ワタシ…… うぅっ…… キューちゃんに内緒で、別の男の子と…… 男の子とぉ……」


 えっ…… お、男!? ま、まさか…… そんな…… 




「食事に行って『おごられ』ちゃいましたぁ……」


 お、おごられ…… たの? ボク以外の男に!!


「ごめんなさい…… そんなつもりはなかったけど、つい魔が差して…… ご飯に行っちゃいましたぁ……」


 そんな…… まさかセーコちゃんがボク以外の男と食事に行って…… おごられるなんて! うわぁぁー!! の、脳が破壊され……  るまではいかないけど、別の男の前でいつものようにモリモリ食べていたのか、と思ったらちょっとショック。


「でも! 美味しかったけど、心から美味しくなかったから! キューちゃんと食べるご飯の方が心まで満たされるの!」


 ……そうか、料理に心までは奪われなかったと。 

 それはお店の人に失礼だから外で言ったらダメだよ?


「一口だけなら大丈夫って言われて、結局ズルズルと……」


 ……食べたのは麺類かな?


「次は断ろうと思ったんだけど、今度はもっと凄いからって言われて…… あまり食べ過ぎちゃダメっていつもキューちゃんに言われているのはジュージュー承知しているけど、断り切れなくて……」


 ふむ…… 次は焼肉だったのか。


「でも! どんなに食べても満たされなかった…… やっぱりワタシはキューちゃんとじゃないと…… ダメみたい」


 『どんなに食べても』って事は、焼肉は食べ放題だったのかな? 

 『満たされなかった』ってその男、セーコちゃんを分かってないな、どうせ肉ばかり食べさせたんでしょ? ちゃんとライスとサラダも大盛りにして食べさせないと、セーコちゃん、肉ばかりなら時間いっぱい無限に食べちゃうからね。


「そっか…… セーコちゃん、おごられちゃったのか……」


「うぅっ! ごめんなさい…… 許してぇ……」


「……うん、許すよ、セーコちゃん」


 よく考えたら…… というか、考えなくても別にセーコちゃんが誰におごられようとボクには関係ない話だった。

 だけど何か反省しているっぽいノリなので付き合っておこう。


「本当に?」


「うん、ボクはセーコちゃんが大好きだからね、でも…… 今度はちゃんと言ってね?」


 おごられてたらふく食べているはずなのに、ボクの家で毎日ボクの作ったご飯をモリモリ食べてるんだもん、そりゃあボディも成長するよね。

 今度から食事に行くなら前もって言ってもらわないと…… それに合わせてメニューを考えないといけないから。


「ありがとう…… 今度からちゃんと『おごられ報告』するね!」


 その言い方はちょっとヤダなぁ……

 でもその男に『おごらせ』るのを許してあげよう…… 食費が浮くし。


「さて、じゃあ続きを……」


 よく考えたら、ボク達食後の運動の途中だった…… まっ、会話しながら楽しむのもいつもの事だし、続き続きっと……



 …………



 食後の運動が終わって改めて詳しく聞いてみると、セーコちゃんはいつの間にかサークルに入っていたらしい。


 その名も『ぽちゃっ娘同好会』 


 名前を聞いて一瞬心配になったが、サークルメンバーは男三人に女の子が三人、そこにセーコちゃんが加わったみたいだ。


 一応セーコちゃんとサークルに顔を出してみたが…… ほっといても大丈夫そう。


 そしてボクの予想通り、サークルはすぐに解散した。


 そりゃあセーコちゃん並みに食べる女の子が他に三人もいるんだ、あっという間にお金はなくなるだろう。


 『いっぱい食べる女の子が好き』だと集まったサークルで、食べさせられないのは致命的だし、あとはが上手くやってくれ。


 男女が三対三、しかも上手く意中の人がバラけていたおかげで、争いにもならなかったみたいだ。



 …………

 …………



「んー! エビがプリプリ! ウニといくらも…… んまっ、んまっ……」


 セーコちゃんが特盛海鮮丼を美味しそうに食べている姿を見ながら、そんな事をぼんやり思い出していると……


「キューちゃん、全然食べてないじゃん! せっかく海鮮食べるために旅行に来たのに、もうお腹いっぱいなの?」


「うん、だから…… 残りはセーコちゃんにあげる」


「えーっ! 大トロも残ってるよ!? 特盛海鮮丼の主役なのに、いいの?」


「セーコちゃんが満足してくれたらボクは嬉しいからね」


 あらかじめ取り皿に取って食べていたボクは、残りのどんぶりごとセーコちゃんに渡した。


「ありがとう! んー! んまっ、んまっ……」


 トロの脂で唇をテカテカさせながらニコニコと食べ進めるセーコちゃん。


「キューちゃん、いつもありがとう! 大好き! これからもずっとワタシのそばにいてね!」


 こんな美味しそうに笑顔でご飯を食べる可愛いセーコちゃんを…… ボクはこれからもずっと、そばで見守っていたいんだ。

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ボクがキミを育てたのに! あんなヤツらに○○られるなんて! ぱぴっぷ @papipupepyou

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