で、君たちは……

ひなの。

で、君たちは……



「―――実はね。君に話したい事があるんだ」


「だろうな。さっきからそういう雰囲気をもの凄く感じてたよ」


「ただ注意して欲しい。自慢話になってしまうかもしれない」


「それはイヤだなあ。自慢話ほど楽しくないものはないからね」


「それはわかってる。わかってるけど話したくて仕方ないんだ。話したくて仕方ないこの気持ちをわかって欲しい」


「そんな事言われたら逆に聞きたくなってしまうじゃないか」


「じゃ話すよ。……実はね。随分前にあるモノを拾ったんだ」


「あるモノ?」


「……たまごだよ」


「た、たまご……?」


「うん」


「え、たまごを拾ったのかい?」


「うん」


「まさかたまごがコロンと普通に落ちてたとでも?」


「そのまさかだよ。自分の目を疑ったからね」


「……それが自慢話なのかい?」


「そう思うならそれでも良いよ。たまごを拾うなんて滅多にない事だしね」


「た……確かに」


「でね。滅多にない事だけに一体何のたまごなんだろうという興味が出てしまった」


「だよな。それは当然だ」


「しかも意外と大きいんだよ」


「どれくらいの大きさなんだい?」


「んー……これくらいだったな」


「いやいや大きすぎだろう。そんな大きなたまご見た事ないよ」


「だろ?だから何のたまごか知りたくなっちゃってさ」


「で、何のたまごだったんだい」


「待てよ気が早いなあ。苦労したんだよ、何のたまごかわかるまでさあ」


「そういえば拾ったの随分前だって言ってたな」


「そうだとも。だってシャツが咲いて散ったからね」


「ええ⁉思った以上に前だったよ!」


「だろ?拾った事すら忘れてしまってもおかしくない。って実際忘れてたんだよ、本当はね」


「じゃ特に苦労はしてないんだな」


「そうとも言う」


「なら教えてくれよ。何のたまごだったんだい?」


「……ヒトだよ」


「え?」


「ヒトだよヒト」


「ヒトって……ニンゲンって事かい?」


「そうだよ」


「いやいやいやいや。真剣に聞いて損した気分だよ。そんなワケないだろう」


「何でそんなワケないんだい」


「だってニンゲンなんてそんな簡単に落ちて……え。本当なのかい?」


「本当だよ。しかもさ、オトナだ」


「ええ⁉」


「たまごの中でオトナに成長したらしい」


「だからか!だからシャツが咲いて散るほどだったんだな⁉」


「だろうね」


「へええええ……いやいやそれが本当なら凄い話だよ」


「だから言ったじゃないか。自慢話になってしまうかもって」


「で……でも僕はあまりニンゲンって好きじゃないんだよな」


「そうなのかい?」


「だって変だろう。何よりもバランスが悪いよ」


「そうかなあ」


「そうだろう。ほらあの先端の部分。何て言ったっけ。穴があって……」


「先端……?ああ“カオ”か」


「そうそうカオ。な?バランス悪いだろう?」


「そう言われてみればそうかもだけど」


「しかも聞くところによるとニンゲンって“タツ”らしいじゃないか」


「ああ。タってるとも」


「もうその時点で考えられないよ。それに何の意味があるのか」


「でも眺めてたら意外と慣れて来るもんだよ」


「もっと言うならニンゲンって“シャベル”らしいじゃないか!!信じられるかい⁉シャベルって!!」


「君、意外とニンゲンに詳しいな。実は大好きなんじゃないのか」


「いやいや絶対ない!それはない!羨ましいなんて本当にない!」


「なら良かった。実はそのニンゲンをΦΨったなんて言ったらどう―――」


「ΦΨった!!⁇」


「う……うん」


「本当に⁉本当にΦΨったのか!!」


「うん」


「……まさか一気に……」


「そんなワケないじゃないか。それこそただの自慢になってしまう」


「え……じゃあ……」


「あるとも。君の分も」


「本当かい!!⁇僕の分も!!⁇」


「僕がΦΨったのは“ウデ”と呼ばれる部分だ。その後ちゃんと綺麗に保存してあるから新鮮なままだよ。当然まだ生きてるしね」


「ΦΨった事ないんだよ!ニンゲンとやらを!」


「だろうね。だから君の分も残しておいたんだよ」


「さすがだよ!!感謝するよ!!これからでも良いかい⁉」


「もちろん。これでやっと全部ΦΨれるよ」




              で、君たちは……

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で、君たちは…… ひなの。 @hinanomaru

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