ミッション10:「美少女(中身男性)たちの戯れ」

「――うっひょっ。目にカゲキでたまらんねぇっ」

「?」


 そんな会話を交わしていた二人の元へ、傍より何かそんな声が割り込んだ。

 それはあからさまな品の無い、囃し立てる色。聞くだけで分かる、隼に鍾馗の今の艶やかな姿を揶揄うもの。

 しかし、台詞に反してその声色は、透る愛らしさを含むものであった。


「あぁ」


 声のした方向、階段前の踊り場に目をやり。

 そこに居た声の主を見て、隼は何か淡々とした色で納得の様子を見せる。


 そこに居たのは、また一人の少女だった。

 歳は16~17程。茶髪のセミショートが飾る元に、勝気で快活そうな美少女フェイスが映え。今はそこに悪戯っぽい笑みを浮かべている。

 女子としては平均より少し上の身長の身体には、ワガママなバストや贅沢な尻に太腿他が主張している。


 一目見ただけで「活発系幼馴染」といった風体、キャラクターに思い当たる女子。


 そしてそのワガママなボディは。濃紺寄りの青色の、ぴっちりしたボディスーツに包まれてまた主張している。

 腕脚にはまた同色のブーツにグローブプロテクタ。

 頭に首周り、胸や腰尻の各所にはアクセントのようにまたプロテクタパーツが飾る。

 そのカラーリングは、自衛隊機で用いられる洋上迷彩と同一のもの。


 明かしてしまえばそれらは、現在の航空自衛隊の主力戦闘機の一つ――F-3A戦闘機のものを反映し、それに合わせたもの。

 目の前の美少女はF-3AベースのFTGS装備の隊員であった。


「あぁ、飛燕か」


 そんな、揶揄うような声色を寄越して来た、そのF-3A装備の幼馴染系美少女を見て。しかし次に隼が呼んだのはそんな名前。

 それは先日に危機からの衝撃の場を共にした、警備小隊所属の同期――式機 飛燕の名に他ならない。

 その通り――その幼馴染系美少女こそ。隼の同期の飛燕、その性転換した姿であるのだ。


 あの日の衝撃の邂逅から、FTGSの実用化・配備運用が開始されて以来。自衛隊内の隊員の多くが性転換時の能力値や適性の検査を受け。

 その内でも能力の出力値、発現が特に秀でる者より選抜され、FTGS装備の運用部隊に配置となっていた。

 飛燕も先日にその一人となった身であり、今にF-3Aモデルの美少女となっているのはそれが理由であった。


「よっす、隼。三佐もお疲れさんです――しっかし、今日もたまらん見た目ですなぁっ」


 その飛燕はまずはとりあえずの、任務より帰った二人への労いの言葉を寄越すと。

 しかし次にはまたその端麗な顔に、反したあからさまな下心丸出しの怪しい笑みを作り。二人の容姿、身体に向けたそんな評する言葉を寄越した。


 もともとミーハーで欲に忠実な所のあった飛燕は。FTGSの実用化以来、見目麗しい美少女美女で溢れるようになった自衛隊内を満喫しているようで。

 ここの所はこのように、セクハラ美少女ムーブがあからさまになっている状態であった。


「最近はそればっかだな、お前さんは」


 しかし飛燕に元よりそういう所がある事を知っていた隼は。そんな彼女(彼)のムーヴに少し呆れつつも、淡々とした色で突っ込む言葉を返す。


「そりゃぁ、ここんところ基地内が華やかでたまらん光景で溢れてますからなぁっ。オヂサン昂ってしかたがないワケですよっ」


 隼からの言葉に言い訳をするでもなく、悪戯っぽい笑みで自身の正直なところを暴露する飛燕。

 そしてまた何か「ニシっ」と企む色を見せると。次には一歩を踏み出し、隼へと歩み寄って来る。


「?、あっ――ふぉっ!?」


 そして、なんとおもむろに。

 飛燕は隼の身に、背後から抱き着いて隼の身を捕まえた。

 その形から必然、飛燕のワガママおっぱいが隼の背にムニュリと押し付けられる。


「おまっ……ふゃっ!♡」


 それに抗議の声を隼が上げようとしたのも束の間。次には飛燕が背後より回した両腕が、隼の乳房と尻腰のそれぞれを取り捕まえ。

 そのこそばゆい感覚に、隼は中身三十路手前の男性らしからぬ、可愛らしい悲鳴を上げてしまった。


「ムフフ、隼の幼いフェイスに。反した発育ボディがたまりませんな~♡」


 そんな隼にしかし遠慮なく、その反応を楽しむように。

 飛燕は肩越しに隼の表情を覗き伺いながら。己の腕中に捕まえた隼の、乳房をふゆふゆと揉み、尻腰をさわさわとやらしく撫でる。


 それは、ぶっちゃけ場合が場合ならセクハラの域のそれだが。

 実の所、性転換を可能とする体質となって以来。二人とその周りでは日常となりつつあるスキンシップの形であった。



 興味のある本来の異性――女の身体となった、しかし精神は同姓たる男。その形態を同じとする同士。

 そんな間柄となった女体化男性隊員等の間で、ある種の箍が外れての過激なおふざけの形が広まりつつあった。

 自衛隊という組織として、風紀への影響がもちろん懸念されてはいるが。

 しかしフィアーの脅威で精神的負担を抱える隊員、人々の日々に。それはストレス発散の形として、今の所はグレーゾーンとして見逃されている状況であった。



「んゃっ……♡おまえっ、懲りずに……んゅっ♡」


 隼は自分をやらしい笑みで覗き込む飛燕に、最近過激になりつつある同期のそのスキンシップに。

 その美少女顔を少し顰め、咎め不服を示す旨を発しようとしたが。


 しかしその言葉は、自身の身体を揉まれて弄ばれ。男性の身体の時よりも敏感さの増したその身に、こそばゆくも甘美さを伴って走る感覚感触に。

 それに阻まれて甘い悲鳴へと成り代わる。


「ぬふふ♡隼は、この戦う女の子の抵抗感が醍醐味だよな~♡」

「お前っ……また頭の悪いっ……んくぅっ!♡」


 そしてそれに心身を溶かされ、真面目な抵抗の意思を蕩けさせられてしまう隼。

 それに飛燕はご満悦の様子で、隼の蕩ける姿をそんなように形容して評する。

 それに咎める言葉を向けようとする隼だが、それはまた乳尻を弄ばれての甘美な刺激に、甘い悲鳴へと変わる。


「むひひっ♡」

「ちょ……んゃ……っ♡」


 そんな、基地庁舎の休憩施設という公の空間で行われるハレンチなスキンシップ。

 なかなかにギリギリな、爛れた光景。


「あっはは……」


 そしてしかし、それを傍から見ていた鍾馗は。

 見慣れて来た光景と、そしてまだセーフのラインだとでも言うように。少しの困り笑いを見せつつ、生温い笑いを零していた。

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