好奇心旺盛な私のアングラ体験記
リョウコ
第1話 変態バーデビューのお話
そこは繁華街の外れにある、とある雑居ビルの一階にあった。
店名だけがかかれた看板の赤い照明が時折チカチカと揺れる。
簡易的な扉のみと看板という殺風景な構えは、一体何の店なのかわからない。
寧ろ、わからなくしているかの様だとも思えた。
ただ通りかかっただけなら100%開けることのないだろう扉の前で、ほんの一瞬躊躇する。
私の後ろに隠れるようにして立っている友達と目を合わせると、やっぱり止めようと言われると思い、敢えて振り向かずに扉を開いた。
私がどうしてここまで緊張しているのか。
それはここが特殊な空間だからだ。
ネットでフェティッシュバーを検索しているうちに辿り着いた。
誰もが「本当の自分」をさらけ出していい空間。
俗にいう、変態バー。という括りになるらしい。
思いきって開いた扉の向こう側。
まず視界に飛び込んできたのは、素っ裸で何故か頭に風船をつけている男性。
初めて男性の裸を見るわけではないけれど、唐突に目にするのは初めての体験。
思わず股間を見ないように顔を凝視してしまった。
「お?はじめてー?」
男性は裸だということを特別だと思っていない様子でごく自然に店の中へと迎えてくれた。
「いらっしゃーい」
照明が赤い…以外は特に何も変わったことのない店内。
鞭や所謂磔台のようなものもなく、カウンターの向こうには、細身でやわらかい雰囲気の男性。
見るからに店員という様な格好ではなく、ゆるーいTシャツ。
カウンターを出ればお客さんと同化してしまいそうな『ママさん』。
店の奥にあるテーブル席に案内されて、改めて店内を見回すと、カウンター席はお客さんで埋まっている。
迎えてくれた男性の格好が特殊だったので身構えてしまったが、大半が普段着でふらりと飲みに来たような感じだった。
意外だったのは男性も女性も同じくらいの割合だったこと。
カウンターには女の人だけ。お客さんは男の人がほとんど。と勝手な想像をしていた。
「ネットか何か見て来てくれたのー?」
「はい、初めてなのでわからなくって」
「そうー。色んな人がいてびっくりするだろうけど自由にしててくれればいいからねー」
気さくなママさんがどんどん話しかけてくれる中、友達はやはり落ち着かない様子で終始キョロキョロ店内の偵察に忙しそうだ。
「…あ」
案外普通なんだなー。とお互いに少し落ち着いてきた…?って頃に友達の小さな声が聞こえた。
入り口を見た私に衝撃が走る。
店に入って来たのは、所謂『女装』の中年男性。
それも、一目で男性だとわかるほどの。
ミディアムロングのフルウィッグを被り、つけ睫毛までつけてビシっとメイクし、派手な色のマニキュアして、ミニスカートをはいている。
しかし仕草や歩き方は男性そのもので、その女装男性(名前をFさんといいました)、私達がいるテーブルにがに股でやってきて空いてる椅子に足を開いて腰掛けた。
タバコに火をつけて
「ママ~。ビール!」
目を閉じると、まるで近所の小さなスナックのようで…。
ポカーンと見ている私と友達にFさんは笑顔を見せて
「ここ、初めて?」
二人して頷くと、Fさんは色んな話をしてくれた。
大学生の娘がいて普段は夫であり父親であること。
女装をしてるのは気分転換で、その時は全く違う人になれるから。かと言って、別に今の生活に何も不満はないということ。
「酒は好きやけど、浮気もギャンブルもせんよ!秘密はこれ(女装)だけや!」
マニキュアを塗った手をヒラヒラさせて笑うFさん。
「浮気したことないけど、嫁はんは一回だけワシが浮気したって思ってんねん」
それは、Fさんが女装した次の日のこと…
買い物に行くために奥さんと車に乗り込んだFさん。
吸い殻入れを見た奥さんの声色が変わったらしい。
『あんた、昨日飲みに行ったなぁ。誰と行った?』
『一人やで??』
『女、車に乗せたなぁ?』
『乗せてへんよ?』
なんか、もうピンときてニヤニヤしてしまう。
Fさんは話を続ける。
『口紅ついたタバコは誰のやねん!』
それ、ワシやーΣ( ̄口 ̄;)
…なんて言えるはずもないFさん。
『あー、会社のヤツ乗せたかも…』
と、苦し紛れの言い訳で何とか逃れたとのこと。
「だいぶ疑ってたけどなぁ。誤解やっちゅーねん!でも…旦那が浮気したんと、女装癖あるんとやったら、どっちがええんやろ?」
…どっちがいいのか…?
私も友達も女装というものに免疫がなさすぎて苦笑いで顔を見合わせた。
「そやそや。おっちゃんの特技見せたろ!」
Fさんがそういうと、ママさんが笑いながらゴム手袋とローションを出してきた。
さっと取り出してくる辺り、どうやら何度も披露している特技なのかもしれない。
二人でゴム手袋を装着し、まずは私から。
拳を握って椅子に肘をついて、今から腕相撲でも始まるのかと思うようなスタイル。
しかしFさんは違った。
スカートを捲り股間に手を入れてちょいちょいとローションを塗ると、私の拳に向かって腰を落とした。
拳が簡単にFさんの肛門へと埋まる。
それはとても不思議な感触で、締め付けはないけれど空気感もなく、温かくて柔らかくて私の拳にまとわりついてきた。
「うそーーー!」
叫んだのは隣で見ていた友達。
Fさんは得意気に
「これだけちゃうで!じゃんけんも出来るで!ねぇちゃん、手ぇ動かしてみ!」
「えっ、えっ」
さすがに戸惑いながら、きつく握った拳をそっとほどいていく。
Fさんの中は、私の手と同じ形にゆっくりと蠢いている。
「じゃーんけーん…」
ぐー!よっしゃ!勝ちや!
と、Fさん。
どうやら、肛門の中の私の手の動きで何を出したのかわかる様子だった。
Fさんが腰を浮かして、肛門から拳が抜ける。
温かい体内から引き抜かれた拳は、少し冷たく感じた。
セックスで男性が女性にペニスを挿入する時、こういう感じなのかな?
ねっとりと絡み付くあの温かい肉に性器がすっぽり包み込まれる。
そりゃ…セックスしたいわな。
昔の彼氏の肛門にふざけて指を入れた時、初めは勃起しなかったペニスが回数を重ねる度に勃起するようになり、硬かった肛門の筋肉が指を受け入れるようになっていった時の感覚。
あの時は肛門の感触よりもフェラの時とはまた違う、女の子のような声を出した彼氏に少しの驚きと言い様のない征服感。そして愛しさでいっぱいになったものだ。
Fさんの肛門で、ふと以前のことを思い出していた私の隣で交替した友達の拳がFさんの肉に埋まっていき、「いやーーー!きゃーーー!」と一層甲高い悲鳴が響く。
その反応を待っていたのか、Fさんは嬉しそうに腰をズッポズポ上下運動させていた。
終始悲鳴をあげっぱなしだった友達とバーをあとにする。
「色々びっくりしたけど…」「うん」「楽しくなくはなかったな」
「そやな。次は女王様がおるバーへ行こうか!」
興奮冷めやらぬ私に余計なことを言ったとばかりに苦笑いした友達から
「そのうちな」
とあやふやな答えが返ってきた。
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