声が高くて低い双子の話
白藍そら
第1話 双子
4月、僕は高校に入学する。そして今日は入学式。
桜が校門で咲き誇っている。鮮やかなピンク、ほどよく散る花びら。まるで絵に描いたような美しさだ。
―と思ったら自分のクラスの場所がわからない。
「どこだっけ?」
目の前に話しかけやすそうな女子がいたので尋ねてみた。
「すみません。1-3ってどこかわかりますか?」
しばらく沈黙が続いた。
「えっと…?」
「あぁ!ごめんなさい!同じクラスなので一緒に行きましょう。」
どうやら話すのが苦手らしい。
メガネ女子。どう見てもクラスカースト最下層だ。
人にランクをつけるのは嫌いだが。
「ここです。」
真新しい1-3の学級表札。新調したのかな。
「ありがとう」
僕が先に教室に入ったが、メガネ女子は顔を赤らめていた。
そんなに人と話したことがないのかと思った。
すると、そのメガネ女子が自分の隣に座った。
黙ったまま下を向いていた。と思ったら急に水筒のお茶をがぶ飲みしはじめた。
「ぁ…あの…!桜田さん友達になってください!」
小さな女の子から出るとは思えない声量で驚いた。
僕は優しいので断ることはない。それにこの感じだと、相当勇気を振り絞って声を出したのだろう。なおさら断れない。
「えっと、花岡さんだよね。前に書いてた。」
「は、はい」
「もちろんいいよ。席隣だしね。」
「よろしくお願いします。」
「あ、敬語禁止ね。」
「わかっ…た。」
花岡さんはきっといい子だろう。話すのが苦手なだけのただの女子。
なんでおそらく最初に話しかけるのが女子じゃなくて男子なのかは気になったが。
「あの…初対面でつっこんでいいのかわからないんです…だけど。制服スラックスなんだね。」
スッキリした。最初からの違和感。
「あ、僕男だよ。」
「だよね!ごめんなさい何言ってるんだ私。」
よほど恥ずかしかったのか顔を隠してしまった。
「声でしょ。なぜか声変わりが来ないんだ。混乱したよね。」
目線が下に向いた気がしたので、喉を見せてみた。
「喉仏も出ないし首もほっそいの。」
すると花岡さんはさらに顔を赤くして走り去って行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私はひかり。4月からJKデビューを果たす陽キャ女子である。私はこの明るい性格で中学では人気者をやり遂げた。
そして今日、入学式で生徒代表スピーチを行う。なんと高校デビューにふさわしい舞台だ。
と思ったら後ろから陰のオーラをすごく感じる。
「なんで私が全校生徒の前で…ブツクサブツクサ…」
わかりやすい陰キャだ。でも私の晴れ舞台で失敗されたら困る。なんとか気分を明るくしよう。
「あのぅ、ペアの人?よろしくね!名前なんていうの?」
「は、はは、は、花岡っひかるです。どうも。」
「めっちゃ緊張してるね。大丈夫だよ。」
生徒代表スピーチ桜田ひかり、花岡ひかる
いざ名前を呼ばれると階段を上るのでさえ緊張してしまう。
大丈夫だ。なんたってあの桜田ひかり様だぞ。
後ろでは一段目で盛大にこけている花岡さんがいた。
なんとか校長の前まで運んだが石より硬くなった体を動かすのは大変だった。
「桜の花が咲き誇り―」
「めっちゃいい声じゃね?」
「あの人女子らしいぞ」
早速生徒がざわついているのが聞こえてきた。
つい自己肯定感があがりすぎてしまう。
次は花岡さんの番。しかし一向に喋りださない。
予想通り固まっていた。というか立ったまま気を失っていた。
スピーチは中止して保健室へ運んだ。
スピーチ原稿を持って固まっていた。
原稿を落としてやっと起きた。
「うげっ。」
「お、起きた?」
「ここは…?」
「大丈夫?頭痛くない?」
私に寄りかかってきた。
「イケボぉ…私なんかにイケメンが…」
「おーい。寝ぼけんな。」
「おぅ女の子だぁ。?!女の子?!」
「あなたのペアの人ですけど。」
「す、すみません。」
急に保健室の扉が開いた。
「花岡さん!」
そこにいたのは私の双子の兄桜田翔太だった。
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