オソガル少年の嫁取り物語 ~乳のデカい女をもとめて~

智子

第1話:ガラ山の隠れ里ソンガンについて

 自然にできた山に名前が付くというのも不思議な話であるが。

 山には名前がついている。東西南北どこにわたっても、人はいるもので。皆が山を指してはすきずきに名を付けている。

 この話は南方を舞台とするので、南の民がその山を名指すときのそれとする。


 ガラさんと呼ばれる山がある。ところ変われば呼び名が変わることがあるが、今回はガラさんと統一する。


 名の由来には諸説あるが一つあげると。


 大昔。神々が喧嘩ばかりしていたころ。殴れば倒れ、倒れたら蹴り上げと大暴れをするものだから、山が崩れるときの「ガラガラ」という音が由来の話。


 由来からわかるように「常人の人が足を踏み入れたい」と考える場所ではない。麓は豊かな森であるのは違いない。成る木の実は動物たちを太く強くした。

 そこの動物たちは並の矢じりや刃では、毛皮を裂くこともままならないほどだ。歯が立たないので、狩人も近寄らず。狩人が近寄らないならば森の開拓もできない。

 人々の多くは宝の山を前にして、指をくわえてみるばかり。それがガラさんであった。

 

 しかし、どこにも例外はいるもの。ガラさんに住まう者達がある。


 彼らは急峻な山々を一つ越え、二つ越え、岩山の頂上に村を築いている。いわゆる隠れ里であるから、巷間に名が伝わることはない。しかし、名前がないとそれは不便なこともあるので、必要にあるとき人々は「ソンガン」と名乗った。

 

 晴天。雲一つない夏の日だ。

 

 ソンガンの広間ではささやかながら宴会が開かれている。

 大きな獲物は秋に備えて、猟を控えるが。小動物のそれは宴会の饗に並んでいる。

 ウサギやテンをひき肉にしたスープ。キジやヤマウズラの串焼き。炙るたびに脂が滴り落ちては、灰が舞い上がる。

 肉への化粧は高価なはずの香辛料がたっぷりと使われている。香辛料の出所でどころは、深く考えない。今日は祝い事なのだから。

 夏となれば、捕れるものにも限りがある。肉よりも魚の時期だ。マスやイワナを山のように持ち込んでは、串と並べて大量に焼き上げる。

 大人達は自家製の酒を持ち寄り、子どもたちは果物を振る舞われた。


 誰もが若い夫婦の幸せを祈り、祝福して馬鹿騒ぎの最中。緊張した顔つきの少年がいた。


 本作の表題。オソガル少年である。新婦である浮かれた姉に気合の一つでもいれてやらんと、弟は良からぬ考えで頭がいっぱいである。握りしめた拳は白く、よほどの感情がうかがえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

次の更新予定

2024年12月3日 01:00

オソガル少年の嫁取り物語 ~乳のデカい女をもとめて~ 智子 @tomoko_1962

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画