第3話 良いものはいい

 

 それは約一年前のこと。

 いとこの女の子が教えてくれた。

 当時、僕は中学2年生で、その頃は『る●うに剣心』にハマって漫画を買い集めていた。

 しかし、自宅へ遊びに来たいとこが、僕の本棚を見てこう言ったのだ。


「あ……幸太郎くんって、あの作品にハマってんだ?」

 

 と引きつった顔で笑う。

 当然、僕はその反応に怒る。

 

「なんでそんな顔をするの? おもしろいじゃん、これ。主人公もカッコイイし!」

「いや……その作品も、幸太郎くんの言っていることもわかるんだけど。私の友達がね……」

「へ?」


 この時、いとこは小学5年生ぐらい。

 友達も同い年の女子小学生だ。


「その子の家に、薄い本があってさ。主人公と”二重の極み”の人がめっちゃキスしててさ……」


 僕の脳内は大パニックを起こし、発狂しそうになった。

 あんなかっこいい主人公やキャラクターたちが、激しいおせっせをしているなんて……。

 世界観はその一言で崩壊してしまい、僕はその作品をしばらく読めなくなってしまう。

 読めばすぐに、いとこの発した映像が脳内で蘇るからだ。


 このトラウマを無くすため、僕は半年以上のイメージトレーニングを行った。

 別に同性愛を扱った作品を見て、差別するつもりはないが……。

 まさか二次創作とは言え、アクション満載の作品がそんな風に変えられてしまうなんて。

 14歳の少年には、荷が重かった。


 絡みのシーンを妄想しては、発狂する日々。

 実際に薄い本を観てないのに……。どうやら僕は想像力が豊かな方みたいだ。

 半年間、彼らの絡みを想像しては発狂を繰り返す。


 そのトレーニングにより、僕は見事トラウマを打ち消すことに成功した。

 いや、正しくは慣れた……と言うべきか。


 ~それから1年後~


 ようやく、トラウマから逃れることが出来たのに。

 ”やおい”という言葉を調べたが為に、また同じ目に合うとは……。

 僕は作品への悪影響を考えて、すぐさまATフィールドを全開。

 母さんという、14番目の使徒の侵入を防ぐことに成功した。


 しかし、母さんの好奇心は止まることなく。

 その事件をきっかけに、どんどんその世界にハマってしまう。

 もう僕がやおいという言葉の意味を理解できたのに、BLと薄い本を漁りまくる。


 良いものはいい、という理念のもと。母さんは布教したがる。

 僕にBL耐性ができたのは、母のせいだ。


「これ、いいわよ」


 とよくマンガを持ってくるのだが、中には地雷がたくさん埋っている。

 日常系の平和な作品かな? と読み進めていたら、急に男同士でやり始める……。

 そんなシーンを見て、僕は叫ぶ。


「って、BLじゃねーか!?」


 これが繰り返し、何十年も続くのであった。

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