銃と魔法とルーレット。
愚者
プロローグ。/ 夢の話。
俺の話を聞いてくれ。
ただのどこにでもいる大学生の話だ。
名前は─── まぁいいだろ。
名乗るほどのものではないさ。
俺は─── 何者かになりたかった。
大学に通い、家に帰って、酒を飲んで、寝る。
それが日常だった。
たまに日雇いのバイトをして、その金でまた酒を買った。
酒を飲めば、特別なヤツになれた気がした───。
何者かになりたいが、何かを始める気力も無かった。
今となっては笑えるな。ただ腕を動かせば、何かを始めれば良かっただけなのにな───。
そんな生産性の無い日々を続けていたある日、忘れもしない、大学3年生の秋の終わり、冬の初めの頃だ。
少しだけ、いつもよりも多く酒を飲んだんだ。
その時の俺は気にしちゃいなかったが───。
泥酔した俺は、死んだように眠った。いや、実際に死んでいた。
俺の心臓の鼓動が止まった時、夢を見たんだ。
宇宙みたいな、無限の星空が広がる空間にいた───。
目の前には、アニメみたいな、いかにも魔法少女らしい、派手な格好の少女がいた。
小学生の─── 高学年くらいの身長だった。
俺は、その少女に見覚えが無かった。
だが、その少女を知っているような感覚があった。
その少女は、俺に語りかけてきた。
「何者かになりたいなら、それだけの"対価"が必要だ。私は"対価"を支払って、あなたを見つけて、あなたに託す事にした。」
何を言っているのかはわからなかったが、何故か、"この言葉に応えなければ。"と、感じていた。
「あとは頼む──いつでも見守っているぞ───」
その少女はそう言うと、一粒の光となり、俺の手に収まった。
その光を掴んだ時、俺は蘇った。
見慣れた天井、割れた瓶、充電されていない携帯電話。
自分の部屋だった。見慣れた光景だったが、一つ見慣れない物があった。
"傘"だ。
赤い色の小さな傘。いかにも少女が持っていそうな傘だ。
酒は家でしか飲まない。酔っ払って持って帰ってきた訳では無さそうだった。
俺は朧気になりつつある、夢で見た光景を思い出していた。
「「あとは頼む─────」」
その言葉を思い出しながら、俺は傘を握った。
その時、
手に違和感を感じた。
傘の持ち手がおかしい。
傘にしては妙に握りやすく、
傘を開くボタンは、まるで引き金のようで────
その"違和感"の正体に気がついた時、傘の持ち手が外れ、考えていたものが現れた。
俺の手には、リボルバー式の銃が握られていた。
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