第2話 スキル「暴食」

 私がもりもりと料理に手を付けては舌鼓を打つ。

 令嬢の中にはそれを羨ましそうに眺めている人もいる。

 一般的なパーティードレスはコルセットタイプでとてもたくさん食べられるような格好ではないのだ。

 私はハイウエストのドレスでお腹を圧迫しない工夫のあるデザインのものを着ている。


「ティエラお姉様、お供しますわ」

「やぁ、ミーラ様、ごきげんよう」

「ティエラ様ほどは食べられないけれど、一人より二人っていいますもの」

「うふふ、ありがとう」

「えへへ、唐揚げ美味しいね」


 ミーラ様は、国王の三人いる子供の長男、次男についで三人目の長女、つまり姫様だった。

 まだ十二歳、大変可愛らしい。国王はそれはもう目に入れても痛くないというほど溺愛している。

 小さなお口を一生懸命に大きく開いて、大きな唐揚げを頬張っていた。

 もぐもぐと口を動かすのすら、小リスのようで愛らしい。

 容姿といえば、実は私もミーラ様に瓜二つで、まだ低い身長、ミニマムボディ、胸はわずかに膨らみがあるだけだ。

 そう、スキルが発現した十二歳から成長しなくなった。

 王家に多く見られる金髪碧眼。ミーラ様はセミロングを纏めている。私はストレートロングを後ろに流していた。


「よく、あの小さな体に入るものだ」

「胃袋がマジックバッグになっている、という噂もなるほど、頷ける」


 なわけ、あるわけなかろうがい!

 改造人間、キメラやホムンクルスじゃあるまいし。


 一人ボケツッコミをしつつ、お肉を食べる手は止めない。

 次はこっちのミートパスタをお皿に山盛り、一人前食べよう。

 普通ならこれで成人の夕食一回分だが、もちろん気にせずもぐもぐする。

 クルクルとパスタを綺麗にフォークで巻いては口に放り込む。

 全て食べきり、紙ナプキンでそっと口元を拭う。

 周りを見ると、まだ腹に入るのか、と呆れている。


 実は家族と王家や一部の上位貴族にしか知らせていない秘密があるのだ。

 この暴食はただの称号やあだ名ではなく、れっきとしたスキル名なのだ。


『暴食……あらゆる食事を魔力に変換する』


 つまり、私は食べれば食べただけみんな魔力に変換される。

 私は魔力量が多い方だが、本来は公爵家では普通くらいの最大魔力なのだ。

 その最大魔力値を超えていくらでも食べただけ『食いだめ』が可能となっている。

 もちろん使ってしまえば減るが、また食べればいいのだ。


 もちろん溜めた魔力を使う当てがある、という意味でもある。

 今現在、国同士は戦争を起こしていない。

 魔族、魔王も大人しくなって久しい。

 しかし各地の魔物は相変わらず国の脅威であった。

 特にS級モンスターや、下級のモンスターであってもスタンピードや、集団で襲いかかってくれば十分な脅威たりえた。


 いつ何時、災害がおきるか分からないのだ。

 備えておくに限る。


 しかし平時はそのような攻撃的用途はない。

 そこで万能魔法師ティエラちゃんである私は違うことに使っている。

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