"星神の守護結界"の魔道具を治す使命~王子様は私と婚約破棄して役立たずな愛人を連れて行きましたが失敗されました……えぇ、私が代わりに?わかりました大切な方のため王命には従います~
蒼井星空
第1話 婚約の破棄
「キミとの婚約は破棄だ! 悪いがもう僕の前に姿を現さないでほしいし、これから行く旅にはキミは連れて行かない!」
これからリーベル王子とともに定められた役務の遂行のために旅路につくはずだった私に、あろうことかリーベル王子が険しい顔をしてそう言い放ちました。
どういうことでしょうか?私は驚きましたが、国王陛下に正妃様、私の両親であるエイフェンダール公爵もみな驚きでポカンとした顔をしています。
この国には古くから"星神の守護結界"という魔道具が存在しています。この守護結界によって王国内では強力な魔物や亡霊、魔族などから守られています。
しかしこの魔道具は約300年に一度、点検・修理する必要があります。この役務は特別な加護を持ったものにしか実施することができないのです。
前回の修理から316年の時が経ち、通常あまり見られない強力な魔物の出現が報告されるようになってようやく、今の王家にようやく"星神の加護"を持つ王子リーベルが生まれました。
なぜかこの加護は王族にしか発現しないのです。この王子様は大切に育てられました。
時を同じくしてエイフェンダール公爵家にも"星の加護"を持つ令嬢シェリル……つまり私が生まれました。
この加護は過去には1名だけですが"星神の守護結界"の点検・修理に独力で成功した者がいます。"星神の加護"を持ったものが不幸にも戦争で命を落としたため、相当苦労して実行されたと記録が残っています。
通常では"星神の加護”よりは弱いものの、"星神の守護結界"の点検・修復を手伝うことができるスキルを得られます。
歴史的に見れば、同時期にこの加護を持つものが生まれる場合、"星神の守護結界"の状態が良くないことが多いそうです。そのため、この2人は協力して役務に当たる運命を負っていると考えられています。
王家とエイフェンダール公爵家はリーベルとシェリルを婚約させ、両家で協力して教育を施し、"星神の守護結界"の点検・修復という役務に当たらせることにしました。
ただ、ここは王族貴族の世界です。リーベル王子は第2王子でしたが、その母である正妃様とその実家であるルオレエスト侯爵家は魔道具修復の役務の成功の暁にはその功績をもって彼を王太子に推すつもりでした。
一方でエイフェンダール公爵家は貴族間のバランスを考慮して王太子にはあくまでも第1王子をあてる算段でした。
しかしそんなことは当事者の1人でもある私にはあまり感知できない話でもあります。
婚約者ではありましたが、"星神の守護結界"の魔道具はとても複雑な機構であり、その点検・修理にはとても繊細な魔力行使技術、高い集中力、深い魔道具の構造に関する知識が必要です。
私はその学習をすること、それから王族としての教育を受けることで手一杯であり、同年代の子たちが青春を謳歌する時期にも身も飾らずに修練を積んできました。
一方でリーベル王子は本来はともに学ぶはずが勝手に別の場所で学ぶと言って出て行ったきりです。
学院では一定の成績を納めているようですが、決して魔法に秀でているという話は聞きません。
本当に大丈夫なのでしょうか?そう思って質問をしてもはぐらかすばかりでした。さらに怒り出されることもありました。
そんなリーベル王子が、とつぜん婚約破棄を言いだしました。
私たちが18歳になって、学院を卒業し、いざこれから魔道具修復のために魔道具が安置してある遺跡に赴くための荘厳な出発式のまさにその時にです。当然驚くでしょう。
私としてはただ加護を受けただけなのにその意図を勝手に解釈されて0歳のうちに婚約させられましたが、リーベル王子に優しくしてもらったこともなく、頼れるところを見せられたわけでもなく、あろうことか婚約しているにもかかわらず学院で浮名を流しているという体たらくですので、彼に何の未練もありません。
むしろ、王宮でたまに顔を合わせ、励ましてくださったライル第一王子の方がよっぽどステキな方だと思っています。残念ながら隣国の王女と政略的な婚約を結んでいらっしゃるので、私には手の届かない方ですが……。
「婚約破棄の理由を伺ってもよろしいでしょうか?」
***
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次の更新予定
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