第20話 要塞街ファレス

「ここか……」

 

 北方、人類軍と魔王軍との最前線。

 ノアジール国、要衝街ファレス。

 ここは街全てが城壁に囲まれているどころか、二重三重と防壁が築かれている。

 更には常に膨大な数の兵士が駐屯している。

 まさに難攻不落の要塞都市であった。

 

「凄いな……」

 

 関所を越えてすぐに城壁は見えていたが、そこを越えてもまた城壁、それを越えて初めて街を囲っている城壁を目にすることが出来る。

 そして、巡回している兵は皆精鋭。

 見ただけでも歴戦の猛者である事は分かった。

 そして街に入れば、また度肝を抜かれる。

 

「こんなにも賑わってるとは……」

「でも……最前線だっていうのにこんなにも一般人がいるなんて……」

「見た所、観光客も多そうだな」

 

 サナンの言う通り、街には多くの人が行き交っていた。

 それは、身なり等からも観光客だということは明白であった。

 しかし、フィアナが不思議に感じるのも道理であり、ここは最前線である。

 それならば戦火を避け、人はあまり集まらず、寂しい街になるか、常に勤務明けの兵士等がいる街になるのが普通だ。

 

「それ程、魔王軍を脅威に感じていない証拠なんだろ……さて、何はともあれ、ここからどうするかだが……」

「流石に今日中に魔王領へ抜けるのは無理がある。ここは一先ず、手分けして宿を確保したり情報を集めたりが先じゃないか? 軍師殿」

「……あぁ。サナンの言う通りだな。そうしよう。……ん?」

 

 すると、すれ違った女性の耳が長い事に気がつく。

 

「あれは……エルフか」

「あぁ。ノージリアは元々エルフが暮らしていた地域でな。魔王軍が劣勢になり、この地が占領されると多くが魔王軍を離れ、移住させられた。今ははるか東の砂漠地帯に国を築いているらしい」

「成る程……念の為魔王と離して連携させない為か」

 

 すると、フィアナが頷く。

 

「はい。それに、この辺りは良質な木材がよく採れ、それがエルフの得意な弓に使われたとのことですが、草木が殆ど生えない砂漠に移住させ、その長所を奪おうとしたのだと噂されていますね」

「へぇ……書物じゃそこまでは書かれていなかったな」

 

 すると、先程のエルフの女性が城門を通ってすぐの建物に入って行く。

 そこは、娼館であった。

 

「……」

「そういえば、入ってすぐの娼館の裏路地に商人がいるとか……早速接触してみますか?」

「……いや、まずは宿を取ろう。その商人についてももう少し下調べしてから接触したい。手分けして取り掛かろう」

 

 皆は頷く。

 

「サナン。一班六人位で三つに分けて、それぞれ荷物を見張る班、宿を取る班、情報を集める班に振り分けてくれ」

「あぁ。了解した。あんたはどうするんだ?」

 

 サナンの問いに、少し間をおいてから周りに、いや、フィアナとレナに聞こえないように近くで答える。

 

「……フィアナとレナを暫く頼んだ」

「……ああ、成る程」

 

 サナンは察したようで、頷いた。

 

「任せろ。二人がお前の後を追わないようにしておくぜ」

「感謝する……が、別にやましい事をするわけじゃないからな?」

「なぁに、少し位は良いんだぜ?」

 

 ため息をつきつつ、改めて指示を出す。

 

「では、それぞれよろしく頼んだ。時は指定しないが、それぞれ頃合いを見て荷物の所に合流してくれ」

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