第16話 今後の動き

「そうか。宮本武蔵は君達に剣術を教えた訳では無いんだな?」

「あぁ。俺等に教えてくれる前に死んじまってな。ただ、俺達は皆あの人に救われたんだ。時には共に戦ったりもした。あの人の戦い方を見様見真似でやってるだけさ」

 

 話によると、魔王派の人間は皆二刀流で、この世界には存在しない刀を二本使うということで、二刀流は魔王派と位置づけられ、表立っては使えないとのことだった。

 因みに、佐切も情報交換として自分の持っている勇者等の情報を打ち明けた。

 

「しかし、刀があるんだな? この世界に」

「いや、これは先代がドワーフに頼んで作らせた物でな。今では交流も途切れ、新たに作ることは出来無いんだ。まぁ、人数分作られ人数が減ったから予備はあるがな」

「ドワーフか……確か、魔族として位置づけられているんだったか」 

 

 サナンは頷く。

 

「あぁ。だから俺達もドワーフの協力を取り付けられたんだ。だがまぁ、知っての通り魔王軍は敗北寸前。魔族認定されているドワーフやエルフは今は魔王とは縁を切り、人間には亜人族として認められている」

「……」

 

 そこまで話を聞き、佐切は話を切り出す。

 

「よし、じゃあ魔王軍としてはエルフやドワーフの協力を取り付けられればまだ戦えそうということか。なら、今後の方針は決まったな」

「……どういう事だ? まさか、魔王軍の元へ向かうつもりか? いや、それ以前にドワーフやエルフの協力を取り付けられるとは思えない! それに、近衛騎士団によってこの下水道の出入り口は常に警備が置かれているんだ。出る事すら……」

 

 すると、佐切は笑う。

 

「そこは俺に考えがある。聞くか?」

 

 

 

「成る程な……まぁ確かにそれなら行けそうだが……」

「あぁ。まぁ下調べや準備は少し必要だが、不可能では無いだろう。下水道からの脱出はこれでよし、と」

 

 そこで、佐切は改めて皆に問う。

 

「じゃあ、今後の方針として、我々魔王派は魔王軍に合流。魔王軍の傘下で戦い、非スキル持ちの立場を守るべく活動を続けるということでいいな?」

「あぁ。異論はない。皆もそれでいいな?」

 

 魔王派の皆は頷く、

 しかし、ソファにいる双子は未だにぐっすりと寝ていた。

 

「……結構うるさくしてたと思うが……よく眠れるな?」

「まぁ……結構寝る子らでな。だが、異論はないと思うぞ。読み書きもできるし、俺等と同様二刀流でも戦える。戦力としても申し分ない筈だ」

 

 佐切は頷く。

 

「よし。実は言ってなかったんだが、王国軍に動きがある。さっきの騒ぎの時、『俯瞰』で拡大して国の様子を見たんだが、大規模な部隊が編成されているようだった。あの時は気にする余裕が無かったが、今にして思えばあれは戦の準備と捉えられる。あれだけの数が出陣すれば、魔王軍もひとたまりもないだろう」

 

 その言葉を聞き、皆の覚悟は決まる。

 

「じゃあ、急いだ方がいいな」

「あぁ。本来なら出陣を食い止めたい所だが、今の戦力じゃ何も出来ない。恐らく情報交換で伝えた俺の同級生である勇者達も関わって来るだろう。何とか戦が始まる前に魔王軍に合流するぞ!」

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