第15話 新たな事実
「宮本武蔵だって!? あの宮本武蔵が異世界に来ていたのか!?」
「あ、あぁ。あの人は自分の事を多くは語らなかったが、名前だけは教えてくれたぞ」
その話を聞き、佐切は少し考える。
(……宮本武蔵は四百年近く前の人物だ。そんな過去の人間がこの世界に来ているとは……いや、嘘の名を教えた可能性もあるか……でも彼が残したという二刀流はまさしく二天一流……)
二天一流とは、宮本武蔵が残したという剣術である。
所謂、二刀流である。
「どうした? 知り合いだったか? まさか……そんな訳無いよな?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
そこで、佐切はとある男の存在を思い出す。
(あ、そういえば……あの人なら何か知ってるんじゃ?)
佐切は『念話』を使用する。
(ジョバンニさん。連絡が遅れて申し訳ありません。いま大丈夫ですか?)
(おお! 佐切殿! ご無事でしたか! 心配しましたぞ!)
念話の相手はジョバンニであった。
それは、安全の報告とともに今のこの一件で聞きたいことがあったからである。
暫く静かになった佐切を不思議に思ったサナンが口を開く。
「ん? どうした?」
「あぁ、ちょっと待っててくれ。宮本武蔵について確かめたいことがある。知り合いに『念話』でちょっとな」
「あぁ、成る程な。それは俺も知りたいしな。何か分かったら教えてくれ」
サナンはそう言うとアジトの奥へと戻って行った。
(さて……少しお聞きしたいんですが……)
(いや、そんな事より今どこに!? すぐに迎えのものを……)
(それには及びません)
佐切は改めて、自分が今後どうするかをジョバンニに伝える。
(自分は今後、魔王派の人間と行動を共にします。このままでは貴方がたにも迷惑をかけてしまいますし、命を狙われた以上、安心して過ごすのも難しいです。これまで匿って頂き、ありがとうございました)
(な……それは……いや、仕方が無いか。私も、貴方と同じ立場ならばそうするでしょう。それで、聞きたいこととは? せめて、なにか力にならせて下さい)
佐切はジョバンニの親切さに心からの感謝を感じた。
(これまで、他に勇者は召喚されてるんですよね? その事実自体は資料で知っていましたが、その中に宮本武蔵という人物はいましたか? 自分が調べた限りはその名は無かったと記憶していますが)
実は、この国の歴史について記された資料に何度か勇者が召喚されたという記録が残っている。
そこで活躍した人間は名も残っていたが、宮本武蔵の名は無かったのだ。
(宮本武蔵……かなり昔にそんな名前の者が確かに召喚されましたな。当人は死んだ筈なのに何故、と言っていたので覚えております)
(やはりそうでしたか……それで、その後どうなりましたか?)
(実は、スキルを得られなかったのです。それで、王国によって奴隷に落とされました。その後はどうなったのか確かな事は分かりません)
その言葉を聞き、佐切は一先ずジョバンニに感謝の意を示す。
(情報ありがとうございます。このお礼はいつか必ず返します)
(……そうですか。楽しみにしてます。今後、我々がどうなるかは分かりませぬが、どうかご武運を)
その言葉を最後に、『念話』は終わる。
「……さて、ある程度分かったぞ。どうやら、宮本武蔵は国に召還された勇者だ」
「何だって!?」
「そして、俺と同郷でもある。時代はかなり違うがな」
佐切は改めて皆の前で自己紹介をする。
「そういえばちゃんと自己紹介してなかったな。俺は佐切勘助。異世界の日本という国から来た。宮本武蔵は歴史上の偉人で、四百年前の人物となるな。改めて、情報交換といこう」
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