第8話 この世界の歴史
「さて。料理を堪能した所で、少々質問をさせてもらっても良いですか?」
「ええ。なんなりとお聞き下され。こちらとしては、その『念話』をどう使うか、早くお聞きしたいところですが」
佐切は黙々と料理を食べ、綺麗に平らげた。
ジョバンニの提案に佐切は頷き、その交換条件を飲んだ。
そして、まずは佐切の質問から始まった。
「では、この国の……この世界の歴史についてお教え願いたい。自分はかなりの歴史好きでしてね。元の世界の歴史もかなり広範囲に調べてたんですよ」
「成る程。そうでしたか。そういうことならば最低限、この国の人間が知っている事をお教えいたしましょう」
ジョバンニはそう言うと立ち上がり、棚から一冊の本を取り出した。
そして、その本の最初の方のページを開く。
そこには、この世界の地図のような物が描かれていた。
「まず、我々の国、ザルノール国はここ。この地図のほぼ中央に位置します。かつては、この地図に描かれている地域全てがこのザルノール国の物でした」
「と、言うことは他にもある小さな国々は?」
「かつての地方領主達が独立した姿です」
地図には、大小様々な国々が描かれており、その中央にはやや大きめな国があった。
ジョバンニが言うには、それがザルノール国であるという。
「まず、百年程前。初代ザルノール国王が未開拓地を切り開き、この地図の範囲まで勢力を拡大致しました。その後、広がり過ぎた領地を統治する為、各地に貴族や優秀な者を派遣し、領主として治めさせました」
「百年前か……」
佐切はイメージとしてはローマをイメージすれば良いと判断した。
地図も全世界、地球が描かれていないところを見ると、今認識している所がこの世界の人間の全世界なのだと判断した。
ローマの時代等がそうだからである。
そして、百年という数字に、佐切は反応を示した。
(この世界の歴史は浅いのか……いや、まだ判断は早いな)
佐切は、再度ジョバンニの言葉に耳を傾ける。
ジョバンニは地図の北を指していた。
「北方には魔族と呼ばれる者達が蔓延っております。当初は関係も良く、派遣された領主や国王とも友好な関係を築いていました。しかし、今から五十年程前にこの地で飢饉が起き、それでも対応のしない国に対して魔族が反乱を起こし、当時の領主も魔族と共に決起し、魔王として国を起こしました」
「ということは……魔王は人間!?」
ジョバンニは頷く。
「ええ。そこは勘違いされやすいのですが、先代魔王は人間です。しかし、既に戦の最中で亡くなり、人間の魔王と魔族の女との間に生まれた娘が今代の魔王として魔族を率いています」
「成る程……ハーフって事か……」
「魔王との戦でまともに対処出来ない国王に嫌気が指し、各地の領主もそれぞれ独立し、国を興しました。まぁ、それぞれの国家は当初は魔王軍に対抗するためにザルノール国を中心として同盟し、連合を組んで魔王軍と戦いました。しかし……」
「魔王軍が劣勢になったら連合を解散した?」
佐切の言葉にジョバンニが頷く。
「魔王軍が劣勢になり、魔王軍に対して連合を組む必要がなくなったのをみると、ここのファンドール国が魔王によって蹂躙され、国力が落ちた国を攻め滅ぼしました。それを皮切りに、様々な国が争い始め、弱肉強食の時代が始まったのです」
「……それにしてはこの国はそれ程荒れている様には見えませんが……」
「それはこの国が隣接する国々と同盟を結んでいるためです。それらの国々で今でも連合を組んではいます。連合自体は完全に解散したわけではなく、参加する国が減っているだけで存在はしております。今でも最大の敵は魔王軍なので、魔王軍討伐のための遠征軍にはどの国も手出ししないのです」
ジョバンニは二階を指さす。
「二階にはこの国の歴史や文化など、様々なことについて記された書物がたくさんあります。恐らく、まだまだ疑問はたくさんお有りでしょう。さらに詳しい事が気になるのでしたら、そちらからどうぞご自由にお読み下さい」
佐切は頷く。
「さて、今度はこちらの番です。どうやって『念話』を有効活用するのか、お聞かせくださいますかな?」
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