第13話 闇に堕ちた獣たち

おなか、すいた……

お父さん、まだかなぁ……

時計が指す時刻は午後九時。彼女が普段夜ご飯を食べる時間から既に三時間も経っていた。

もうがまんできない…

彼女は父親の仕事部屋へ行くと、ドアをノックした。

コンコン

「お父さーん、夜ごはんまだぁ?」

……………………………

返事は返ってこない。

そりゃそうだ。彼女の父はもう既に事切れているのだから。

だが、そんなことを知らぬ彼女は返事が返ってこない不安に涙ぐみながら健気に扉を叩き続ける。

「おとーさん!!」

……………………………

中にいる男が煩わしげに振り返りドアノブに手を伸ばす。

そして彼女もドアノブに手を伸ばそうとしたその時。気配を消し後ろに立っていた男が彼女の肩を叩いた。

「お父さん?」

彼女がそう言って振り向いた先には包帯を巻いた黒髪の男の人が立っていた。

「君の父親は仕事が忙しくてしばらく戻ってこられないのだよ。彼に頼まれてね、しばらく君を預かることになった太宰だ。よろしくね、美玲ちゃん」

それが、闇に堕ちた獣たちの出会いだった。


◇◇◇


太宰さんに連れられて大きなビルに来た。家の外に出たのは初めてだったからちょっと怖かったけど、なぜかこの人なら大丈夫って思えた。太宰さんはビルに入って一番上の階に行って、とても広い部屋に入った。近くの椅子に座るように言われて座っていると、少しして背が低めの男の人が入ってきた。

その人は太宰さんと喧嘩……?お話……?を始めた。

どうやら私の世話はその中也って人がしてくれるらしい。

中也さんが部屋を出ていくとわたしも着いて行くように言われたので部屋を出た。

太宰さんと違ってズンズン進んでしまって、ついていくのが大変だった。

中也さんの部屋に着いたらしい。鍵を開け、部屋に入ると帽子と上着をハンガーにかけ、ドカっとソファーに座った。不機嫌そうだ。

わたしはどこに座っていいのか分からなかったので、とりあえず床に座った。と同時にお腹が鳴る。すると中也さんはため息を吐きながら携帯を取り出した。

「飯適当に頼んどくから、風呂にでも入ってろ」

「わ、わたしお風呂一人で入れない…」

「あ゛?」

「ご、ごめんなさい……」

「クソ………」

中也さんはソファーから起き上がると上着のポケットを探り、携帯を取り出した。

「樋口。今暇か?ちょっと俺の部屋来い」

「え、あっはい!」

「銀が来るまでそこで待ってろ」

そう言って中也さんは台所へ向かう。液体を淹れる音がして喉が渇いていたことを自覚する。渡されたお茶を有難く受け取り飲もうとしたところで中也さんが不思議そうに言った。

「そういや手前、なんで床に座ってんだ?」

「………え、?」

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