第11話 入社

私が意識を取り戻すと、そこにはたくさんのごちそうと遊び道具があった。

そう認識して数秒後にクラッカーの音が鳴り響き、みんなの声が聞こえた。

「美玲ちゃん、入社おめでとう!」

「…!これは…」

「あんたの入社祝いパーティーだよ」

「お祝い…? 私、こんなたくさんの人にお祝いされたの初めて!」

「そいつはよかったねぇ。あと、ここには初対面の人もいるから、まず自己紹介すんだよ」

自己紹介?

………取り敢えず名前と異能力と好きなものでも言っとけばいっか

「わたしはね、美玲だよ! 雨窓美玲 十歳! 異能は『双子』って言って、二人までなら人形に命を与えられるの!

 好きなものは犬と甘いものとフルーツで、嫌いなものは雷と暗いところと、お化け!よろしくね!」

わたしが自己紹介を言い終わると、社長の顔がなんかさらに怖くなった。

「貴君は犬派…なのか?」

「…?、うん」

「そ、そうか…」

「社長!それは後!」

乱歩さんは社長にそう言うと、グラスを掲げた。

「カンパーイ!」

「か、乾杯!!」


◇◇◇


パーティでは

「フルーツで一番好きなのは何?」

「蜜柑と柘榴とね、メロン!」

「柘榴……こりゃあ珍しいねぇ」

などと少し質問タイムをして、お菓子を食べたり、ビンゴ大会をした。そして……

なぜか私とミアが共存しているのを見ることになった。

みんな確認!って言ってるけど、目が面白そうに笑ってるから絶対違うと思う。まぁみんなが楽しめるならいっか

私はヘアゴムを外して一つくくりにすると、わたしの中にわたしじゃない何かが出てきた。

そしてミアはわたしが言う前に勝手にしゃべり出した。

「んで?また呼び出して何の用?」

「ちょっと! 今わたしがしゃべろうとしてたのにー!」

「あーはいはい もう、うるさいなぁ。一応私の体でもあるんだからいいでしょ?」

「よくない!」

この時、みんなの内心には一つ言葉が浮かんだ。

……カオスだ

そりゃそうだろう。簡単に言うと今わたしは一人二役状態。そして、言い争いをしている。周りからすればカオス以外のなんでもない。

でもわたしはそんなみんなの内心なんて知らずミアとずっとしゃべり続けていた。

永遠と続く言い争いというか会話にみんなも落ち着いてきたようで、紫の瞳、綺麗だねーなどと楽しくおしゃべりしていた。ミアと共存して十分が過ぎた頃、「よーし、確認できたからもう戻っていいよー」と言われたのでわたしは一つくくりにしてたのを二つくくりに戻してパーティーの続きをした。パーティは新しい発見の連続だった。わたしが犬好きだってことを気にしていたらしい社長が猫を推してきたりした。猫を知らないって言うとみんな驚いた顔をして、賢治さんが外にいた大人しそうな野良猫を捕まえてわたしの腕に乗せてくれた。猫はとても暖かくて、ふわふわしてて、とても可愛かった。

猫も悪くないって言ったらお母さんたちは怒るかな……?


わたしはそんな一連の出来事を頑張って紙にまとめて、お母さんとお父さんの墓に埋めた。お父さんの墓は庭にお母さんの墓があったので、その横に埋めた。家はしばらく立ち入り禁止になっていたけど、昨日に警察が撤収したからもう自由に入っていいそうだ。家の中はひどいままだったけど、この世に三つしかない両親との思い出のものにまた触れることができるだけで十分だ。ローン?ってのも、わたしのお父さんは団体信用…生命保険……?に入ってなかったらしく、支払わなくて済むらしい。

……っと、そんなことは置いといて、

わたしは途中の花屋で買った、ピンク色のサザンカを墓に添えて手を合わせた。

「上手くやっていけそうで安心したわ 頑張ってね」という母の声と

「……悪かった。」という父の小さな声が聞こえた気がした。

わたしは勝手に、死んだ後にお母さんにこってり絞られたのかな? という勝手な妄想をして家を出た。足取りは心なしか軽かった。

さーて、帰ろっか! わたしの居場所に





















報告書。

雨窓澪夜三十一歳。10月27日、神奈川県横浜市中区の住宅にて、刃物のようなもので刺された状態の遺体が見つかる。

第一発見者は家に仕えていたメイド。被害者に血縁者は、妻も十年前に病死。

該当する刃物は家にはなく、また監視カメラにも急に血を吐いて倒れた被害者しか映っておらず。異能が使われた形跡もなく。

これを自殺として処理する。

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