なんでもレンタルショップ(オムニバス短編集)

OKAKI

カメラ

第1話

「くそっ!」

「どした?」

 思わず上げた声に反応したのは、後ろの窓前で女子3人組と立ち話をしていた高山。

「何でもない」

 高山が、少し離れたところに座っている俺のところまで来てスマホを覗こうとするから、さっと見ていた画面を消し、検索画面を表示する。

「またフォトコンに落ちたのか? そんで、次のフォトコン探してんのか?」

「うるさいな! 邪魔するならあっち行けよ」

「いや、邪魔じゃなくて……先輩達来たぞって、教えたかったんだが?」

 言われて顔を上げると、前のドアから先輩達が入ってくるのが見えた。ミーティングが始まる。俺は座っていた一番後ろの席を立って、前の方に移動する。

「えっと、陸上部から予選会の撮影依頼が来てます。来週の日曜日です」

 部長が紙を見ながら読み上げる。

「これから運動部の試合が多くなるので、撮影依頼も増えると思います。持ち回りは詳しい日程が来てから決めたいと思いますが、勉強になるんで、一年生は積極的に行ってください」

 俺達1年5人が固まって座る机を見て、部長が言った。部長は持ち回りと言ったけど、俺は全部の部の撮影に行きたいと思っている。

「それから……」

 ぺらりと紙をまくる。撮影依頼の話は、もう終わったようだ。

「この前も言ったけど、文化祭でやりたいことを考えておいてください。例年通りだと写真展示になりますので、展示テーマも考えておいてください。以上です」

 ミーティングが終わると、みんな思い思いのことを始める。先輩達の中には、早々に帰る人もいる。

 これが、俺が入った写真部の現状。

 毎週火曜日、この社会科室に集まる。話し合いの後は、各自好きなことをして過ごす。写真を撮ることはまずない。

 俺は今日も、落胆のため息を吐いた。

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