僕は現実から逃げたかった

himawari

第1話 父さんが死んだ

父さんはいつも美味しいものを僕にくれる。一緒に食べることが、無口な父さんとの楽しみだった。


僕は素直じゃないから父さんに好きと言えなかった。思春期の僕は、『汚い』『触らないで』と父さんを邪険に扱った。


本当は大好きなんだよ。


ごめんね、父さん。


末っ子の僕を1番可愛がってくれた父さんだったのに・・・。父さんはしょんぼりしていた。僕はなんとも思わなかった。


ある日、1度も怒ったことのない父さんが僕を注意した。ただ、注意されただけだったのに、僕は父さんに『死ね』と吐いてしまったんだ。


父さんが死んだのは、その1週間後だった


夜、電話がなって、その電話に僕は出たんだ。警察からだった。


わけが分からなくて、母親に代わってもらった。母親は警察と話していた。嫌な予感がした。とても苦しくなった。


電話を切った母親は言った。


父さん死んだ


姉と母親が泣いている。


僕達は警察署に車で向かった。親戚にも連絡して、離れて暮らす兄にも連絡して、車で30分かけて・・・


父さんがヨコになっていた。


白い服を着せられて、目を閉じていた。


姉と母親は父さんにすがって泣いていたけど、僕は涙が出てこなかった。意味が分からなかった。だけど、次第に『僕のせいだ』と考えがつくようになった。


交通事故だった。


即死だったから苦しまずに逝けて良かったねって誰かが言っていた。


その日から僕の時は止まり、僕は自分を殺したんだ。感情や情緒を全て失った日だった。


父さん、どうして死んじゃったのって思っても、もう遅かったんだ。


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