【地球最強夫婦】新婚旅行で魔界を救う

若福清

第1幕 火の国イグフィア

第1話 大冒険の始まり

「さぁ、書きえようではないか。

 この世界の間違ったを。」


そう1人の男が3人の男と2人の女達に話しかける。


その声には強い覚悟がめられていた。



「はぁ?!新婚旅行で異世界の“魔界まかい”に行きたいから許可証きょかしょうをくれだと?!」


そう世界せかい安全あんぜん協会きょうかい総会長そうかいちょうである“篠原しのはら研斗けんと”が驚いた声を上げる。


「いいだろ?書いてくれよ~。」


そう“強福きょうふく右灯うとう”が体をくねらせてお願いする。


「は~ぁ。お前等、異世界がどんな所か分かってるのか?

 まだ調査が何1つとされていない危険な場所なんだぞ?」


そう研斗は呆れた声で言う。


「だからいいんじゃないか。

 新婚旅行の思い出にワクワクとドキドキのスパイスをかけたいんだよ。」


そう右灯が笑顔で言う。


そんな夫をフォローする様に妻の“左夜さよ”が話にわって入る。


「それに、異世界への扉が見つかって早、100年近く。いまだに調査の1つもできていないのはそれができる人物も軍もあなた達、世界安全協会には存在しないからでしょ?もううちだけで何とかしようとするのは限界なのよ。世界のトップの五大神ごだいじんもしびれを切らせてるじゃないの?ウチ等、に任せてみれば?」


そう左夜が微笑みを見せて言う。


右灯と左夜はこの世界で地球最強の夫婦と呼ばれている。


またの名を“血傘ちがさの夫婦”。


その名の通り2人の背中にはいつも傘が装備されている。


「・・・分かったよ。許可証書いてやるよ。ただし、少しでも危険だと思ったらすぐに帰ってこいよ。」


そう研斗が真剣な眼差しで言う。


「心配すんな。いい報告を持って帰ってきてやるから。」


そう右灯が笑顔を見せる。



「お二人さん。本当に武器はその傘だけで大丈夫なんですか?剣や銃なんかも用意できますよ?」


そう異世界の扉の門番をやっている男が心配した声で右灯と左夜に尋ねる。


「ちっちっちっ。分かってないなぁ、君は。この世界で最強の武器は傘だよ。」


そう右灯が人差し指を左右に振って教える。


そんな右灯の言葉に男は「はぁ」としか言葉を返せなかった。


「分かったら早く扉を開けてくれ。」


そうワクワクとした声で右灯が言うと男は言われた通りに異世界への扉を開ける。


「では、お二人共、気をつけて。」


そう男は右灯と左夜の2人に声をかける。



2人が扉を出るとそこに広がるのは深い森だった。


「ここが魔界か?ただの森に見えるけど。」


そう右灯が首を傾げる。


「確かにね。」


そう左夜が同意の言葉を口にした瞬間。

 2人の耳に少女の叫び声が聞こえる。


2人の目線はその声の方へ向けられる。


すると1人の少女が1匹の“犬の魔獣まじゅう”に追われていた。


「おぉ。あれは魔獣と言うやつではないか?って事はここは間違いなく魔界だな。」


そう右灯がテンションの高い声で言う。


「そんな呑気な事言ってる場合じゃないでしょ?あの子を助けるわよ。」


そう叫ぶと左夜は少女の方へ駆け出す。


「ガッテン承知!!」


そう元気な返事をした右灯は犬の魔獣の方へ走り出す。


そして傘で犬の魔獣をぶっ飛ばす。


「いや~ぁ、さすが世界最強の武器ですな~ぁ。」


そう満足そうに右灯は犬の魔獣が飛んで行った方向ほうこうを見つめる。


「あなた大丈夫?」


そう右灯の後ろで左夜が少女に声をかける。


「は、はい。ありがとうございます。」


そう少し震えた声で少女は答える。


「無事なら良かった。ウチは左夜。こっちはウチの旦那で右灯君。あなたは?」


そう左夜が尋ねる。


「“リリス”です。」


そうリリスは名乗なのる。


「そう。リリスちゃんはこの辺に住んでるの?」


そう左夜が質問した瞬間。男の声がリリスの名を呼ぶ。


「やっと見つけたぞリリス。」


そう言うと男は乗っていた馬から降りる。


そして、右灯と左夜の姿を確認すると

 「あなた達は?」と尋ねる。


そんな男に左夜は自分達は地球と言う世界から来たのだと説明する。


「まさか、この魔界以外にも世界があったとは。いえいえこれは失礼。私は“アモス”。その少女、リリスが住む村の守護長しゅごちょうをしております。」


そうアモスが自己紹介をすると続ける。


「どうかわが村に来てください。

 リリスを助けていただいたお礼をしなくては。」


そうアモスに言われて右灯と左夜の2人は村へと向かうのであった。



村の名前はグリーン・ド・エッジ。

 何だか少し荒れた村である。


「アモスから話は聞きました。

 リリスを助けていただき、ありがとうございます。私はこの村の村長をやっている“オリバー”と言います。」


そう1人の老人が右灯と左夜に頭を下げる。


「いえいえ。気にしないでください。」


そう左夜は人当ひとあたりのいい笑顔で答える。


「それで?なぜ、あんな少女が1人で魔獣なんかが居る森に?」


そう左夜は尋ねる。


「・・・兄を…助けに行ったのです。」


そうオリバーが答える。


「兄をですか?」


そう左夜が聞き返す。


「はい。全ての始まりは5ヶ月ほど前でした。ある男がこの国の王都おうとであるノクシアをほろぼし、支配したのです。

 その男の名は“ダリオス”。

ダリオスはノクシアを支配すると“魔力石まりょくせき”を使い、この国に魔獣を生み出しました。」


「その魔力石と言うのは?」


そう左夜が尋ねるとオリバーは説明する。


本来ほんらい、魔獣とは太古たいこの存在なんです。

現代では存在しません。」


そのオリバーの話を聞いて右灯は小さな声で「地球こっちで言う恐竜みたいなもんかね?」と左夜に話しかける。


その右灯の問いに左夜は「そうなんじゃない?」と答える。


2人が何やらこそこそ話しているのでオリバーは話を止める。


「あっ。すいません続けてください。」


そう左夜が笑顔を作って言うとオリバーは話の続きをする。


「魔力石の事でしたね。

 魔力石とは我々、魔人まじん魔力量まりょくりょうを上げる事ができる石なんです。それこそ、太古の存在を作りだす事もできるほどに。」


そうオリバーが説明する。


「なるほど。この国が大変だと言う事は分かりましたが、それとリリスちゃんのお兄さんとはどうつながるんですか?」


そう左夜が尋ねる。


「・・・2週間ほど前でした。

 先ほどお二人が居たエコーの森から出てきた魔獣がこの村を襲ったのは。

 その魔獣に…リリスとその兄である“カイ”の母親は殺されました。

 2人の父親は2年ほど前に亡くなっているので、たった1人の親でした。

 その親を魔獣に殺されたカイは怒り、1人で王都に向かいました。止める私達の声など聞かずに…。それから2週間…。

カイはこの村に帰ってきていません。」


その悲しい話を聞いた右灯と左夜は立ち上がる。


「つまり、その王都にカイって奴が居るんだな。」


そう右灯が確認する。


「えぇ。無事に着いていれば。」


そうオリバーは右灯を見上げて答える。


「よし、じゃぁ行くか。」


そう右灯は隣に立っている左夜に声をかけると左夜は無言で頷く。


「い、行くってどこにですか?」


そうオリバーが焦った声で尋ねる。


「決まってんだろ?王都だよ。」


そう右灯があっさりとした声で答える。


「私の話を聞いていましたか?

 今、王都は危険なんですよ?!」


そう少し声を荒くしてオリバーは言う。


「村長さん。心配しないでください。

 ウチ等、地球最強夫婦なんで。」


そう左夜は明るい声と笑顔で答える。


そして2人は村長の家を出る。


すると家の前でリリスが不安そうな顔を2人に向けていた。


そんなリリスに目線を合わせると左夜は優しい声で言う。


「もう少し待っててくれる?

 必ずお兄ちゃんを連れて帰ってくるから。」


その左夜の言葉にリリスは明るい表情を見せる。



「さ~ぁて、楽しい新婚旅行になってきたなぁ。」


そう村を出た右灯は左夜に話しかける。


「えぇ。そうね。」


そう左夜は言葉を返す。


ここが始まりである。

 地球最強夫婦が魔界を救う大冒険の。

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