優柔不断な俺のせいで学校のアイドルと幼馴染がヤンデレになった件
taki
第1話
「町田夕日くん。あなたのことが好きよ。もしよければ私と付き合ってくれないかしら」
「え…」
暮れなずむ放課後の屋上。
人気のないその場所で、俺は学校一の美少女と名高い花沢ひよりから告白をされていた。
突然のことで何が何だかわからない。
ドッキリかと思って周囲を見渡す。
「町田くん?」
「…っ」
花沢が俺の方を見て首を傾げる。
澄んだ瞳が真っ直ぐに俺のことを見ていて、ドキドキしてしまう。
自分が、あの花沢ひよりに告白された。
その事実をいまだに飲み込めないでいる。
花沢ひよりは学校内においていわゆるアイドル的な存在だ。
芸能人レベルの容姿に全国レベルの学業成績。
人当たりもよく周囲の生徒のみならず、教師たちからもすかれている。
髪型が少し変わったりしただけで、花沢ひよりに彼氏ができたかもしれないと噂になるぐらいに有名で注目の的。
大してこの俺、町田夕日ははっきり言ってモブもいいところだ。
目立った特技もなく、容姿が整っているわけでもない。
多分全国を探せば俺に似たような男子高校生はたくさん見つかるだろうし、ある日突然クラスから俺の存在が消えたとしてもクラスメ
イトが気づいてくれるのかすら怪しい。
つまり花沢ひよりは俺にとって高嶺の花で、決して手の届かない存在なのだ。
そんな花沢ひよりが俺に告白するはずがない。
少しでも常識を持つ人間なら、ドッキリとかの可能性を疑ってしまうだろう。
だが、花沢ひよりの表情はどこまでも真剣だった。
「聞こえてなかった?」
「え…」
「返事、聞かせてもらえないかしら」
「…っ」
花沢が告白の返事を催促してくる。
俺はもう一度辺りを見渡した。
どこかにクラスメイトたちが隠れているのだろうか。
俺が告白を受けた瞬間に、ドッキリ大成功!と言って出てくるのだろうか。
でも、花沢ひよりが果たしてそんな性格の悪いことをするだろうか。
花沢の性格を考えた場合、仮にいたずらずきなクラスの男子連中にそんな話を持ちかけられても断る気がする。
「そ、その…」
結局、これがドッキリなのか、真剣な告白なのか判断しかねた俺は、咄嗟にお茶を濁す選択をしてしまう。
「なんで、俺なんだ?」
「え…?」
「俺、花沢とあんまり喋ったことなかった気がするんだけど…」
「そうね。私に勇気がなくてあなたに話しかけることができなかった」
「…え」
「でもずっと離れたところから見てて、いいなって思ってたわ。それで、このまま遠くから見てるだけじゃダメだって思ったのよ。だから、こうして思いを伝えることにしたの」
「…っ」
時間が経つごとにどんどん鼓動が加速していく。
花沢ひよりの声には真剣味があった。
俺は恥をかくことを覚悟して、この告白を真剣なものとして受け取ることにした。
「花沢の気持ちはわかった」
「じゃあ」
「でもごめん…俺は花沢とは付き合えない」
「…」
花沢が動きを止めた。
その表情に悲しみが宿った気がした。
「理由を聞いてもいいかしら?」
「好きな人がいるんだ」
俺はせっかく告白をしてくれた花沢に嘘をつくのが忍びなくて、正直に理由を告げた。
「俺には好きな人がいる。だから…花沢とは付き合えない」
「…そう」
花沢が納得したように頷いた。
「それじゃあ仕方がないわね」
「…?」
驚くほど簡単に引き下がった花沢に俺は思わず二度見してしまう。
やっぱりドッキリなのだろうか。
そう思った次の瞬間、花沢がこういった。
「間違っていたら申し訳ないのだけれど…町田くんの好きな人って月野さんじゃないかしら?」
「…!?」
好きな人を見事に言い当てられてしまった俺は、目を剥いてその場に立ち尽くしてしまうのだった。
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