ボーイッシュな彼女が尽くしてきます
和泉和琴
第1章
第1話 僕と友達になって
「水瀬くん!ご飯できたよ!」
「わぁ!!美味しそう!僕の好きなハンバーグだ!」
『それじゃあ、いただきます!!』
なぜ、こんな美少女と同じ屋根の下ご飯を食べているのかというと……
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僕の名前は
桜もすっかり散り、皆がクラスに馴染み、それぞれのグループが出来上がっていた5月。
僕はクラスに馴染めずにいた。
(たくさんの友人に囲まれ僕の高校生活はスタートする…!)
なんて、思っていた入学式5日前……
「中学では彼女はおろか、友達もろくに出来なかった…高校でこそ彼女を作り、たくさんの友達にも囲まれるぞ!」
高校進学を機に一人暮らしをすることにした僕は意気揚々と荷物を運んでいた。
「あぶなーい!!」
そう声が聞こえたのも束の間、気がつくと僕は病院のベッドの上にいた。
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あの時、ブレーキが壊れた自転車が僕の方に突っ込んで来たらしい。
自転車に乗っていた人は幸いにも僕がクッションになり怪我をすることがなかったという。
(はぁ…僕もあの事故がなかったら今頃クラスの中心とは言わずとも、馴染むことくらいはできたはずなのに…)
入学式前の事故により初登校が遅れた上に、初登校してすぐにGWに入ってしまい僕はすっかりクラスに馴染めずにいた。
「おっはよー!大海ー!!」
無駄にデカい声に、無駄に爽やかな笑顔、そして無駄に整った容姿のこいつは小学校からの腐れ縁で「『自称親友』
名前の通り、空に浮かぶ太陽のように明るく誰にでも分け隔てなく接する良い奴だ。
「…なに?太陽」
「なにって挨拶だろ挨拶」
こいつは何かと僕に構ってきて、結構めんどい…
「お前、朝から無駄に元気だよな」
「無駄ってなんだよ無駄って。親友である俺が挨拶したんだぜ?ほら、お返しのハイタッチ!!」
そう言って、何故か得意げに手を出す。
その顔は本物の太陽のように眩しかった
「ーーにしても、お前も災難だったよな〜」
「いつまで言ってんだよ…仕方ないだろ」
太陽は入学前の事故で僕に友達が出来ないことを気にかけてくれていた。
「太陽くん!おはよう!」
「太陽!おっす!!」
「おー!おはよ!ほら!大海も挨拶しろよ」
太陽は僕とは違いクラスの人気者だ。もちろん、みんなから話しかけられる。
そして、僕にクラスのみんなと関わるきっかけをくれる。しかし…
「おはよう。富士くん。草野さん。」
「あ…おはようミナセくん…?」
軽い挨拶をすると2人は足早に去っていった。
(僕の苗字は'' みずせ ''だ)
そう呟いた。
この瞬間はいつも惨めな気持ちになる。
もちろん、太陽が悪いわけでも、誰が悪い訳でもない。仕方の無いことだ。
キーンコーンカーンコーン
「お前ら座れ〜!」
朝礼のベルと共に、先生が入ってきた。
と、同時に視線を感じた。
(なんか、見られてたような…いや、僕じゃなくて太陽だな)
中学に上がりまともに人と関わることが無くなっていた大海は自然とそう考えるようになっていた。
いつも通りの時間が流れ、昼休みになった。
「飯食いに行こうぜ!大海!」
「うん。」
太陽と僕はいつもの屋上に行こうとした。
「…水瀬くん」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれたことに驚きつつ振り返った。
「あ、どうしたの?雪乃さん」
そこに立っていたのは、
ボーイッシュで整った容姿をしている彼女は密かに男子人気の高い女子だ。
「これからお昼?一緒に食べてもいい?」
「ああ、お昼だよ。もちろん、いいよ」
返事をした後、ふと気づいた。
(あれ?一緒に食べるって言った?聞き間違いだよね?間違いであってくれ話せないよ)
女子とまともに話した経験のない僕は、間違いであってくれと願った。
しかし、そんな僕をよそに彼女は屋上へと向かっていく。
「大海、お前雪乃さんと関わりあったのか?」
「そんな訳ないだろ!どうしよう、ご飯を一緒に食べてあげたからってお金をゆするつもりだったら」
そう言い、慌てふためく僕を見る太陽の目は呆れていた。
「いやーごめんねー水瀬くん、太陽くん。雪乃が無理言って」
そう話す彼女は雪乃さんの友達の
「う、うん。ちょっと驚いたよ。なんで、僕なんかに話しかけてくれたか春原さん知ってる…?」
「春原じゃなくて、桜でいいよ水瀬くん!」
「じ、じゃあ、僕も大海って呼んで」
僕に初めての下の名前で呼べる女子ができた。
「詳しくは知らないんだけど、なんか大海くんに助けられたことがあるからお礼を言いたいんだって」
「助けた…?僕が雪乃さんを?」
僕に心当たりは全くなかった。雪乃さんと話すのもこれが初めての事で関わることもなかった。
屋上に着くと彼女は頭を下げた
「水瀬くん…ごめんなさい!」
お礼ではなく謝罪を言い
頭を下げる彼女は真剣そのものだった。
「雪乃さん!?なんで謝ってるの?」
「入学式の5日前。水瀬くんが怪我をしたあの時、ぶつかった自転車にわたし乗ってたの!」
まさかの事実を伝えられ僕は一瞬戸惑った。
「ぼ、僕が入院するきっかけになった、あの自転車…?」
「そうなの…わたしのせいで、水瀬くんが出遅れて1人でいるのが耐えられなくて…」
そう話す彼女は少し震えているように見えた
「そんな事なら気にしないで!あのおかげで、前より丈夫になるってお医者さんも言ってたし!」
そう言って笑ってみせた。
「それに、僕がクッションになって雪乃さんに怪我が無くてよかったよ!」
「で、でも、わたしのせいで水瀬くんクラスに馴染めてないんじゃって…」
「だから…もし、わたしに出来ることがあったら言って欲しいの…罪滅ぼしになるか分からないけど…」
もう気にしていないが、それでは彼女は納得しないかもしれない。
「じゃあ、僕と友達になってよ」
「え?と、友達…?そんな事で良ければ…よろしくね水瀬くん!」
そう言って笑顔を浮かべた彼女を見て不覚にも僕は見惚れてしまっていた。
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