第9話 絵

上から下に、揺れる一本の線を描いた。

 

それだけじゃ物足りなくて、同じように線を描いた。

 

まだむずがゆくて、今度は右上から左下に向かって、揺れる線を描いた。


そうしたら、その線が人間を描いているように見えた。


同時に、それは人生だと思った。


だから左下に、逃避を描いた。右上に、破壊を描いた。


どうにもこのペラ紙一枚じゃ狭い。


紙をはみ出して、机の上に線を伸ばした。


結局、どこまで伸ばしても、いつかは限界が来る。


だからこの紙の奥深くまで、描いていこうと思った。


奥行きは無限に続くようだ。


いつかはやめないといけない。



 

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