からの空

@karazora

序章

序章


 ——私にしらないものはない。未知以外は。


 私は全てを知っている。

 なぜなら私はゼンの上に成り立つものだからだ。


 だから私は全てを知っている。あらゆる仕組みと構造を知り尽くしている。

 けれども、それに実際に触れてみるまでは、なにもしらないのと同じだ。


 全ては言葉だ。

 私は言葉を介して世界を理解する。


 【はじまり】の前には何もないし、【おわり】の後にも何もない。

 そこにはなぜという理屈などなく、ただただ透き通った意味だけがある。


 私は全ての言葉を知っているが、全ての意味を理解しているわけではない。

 全ての意味と全ての言葉が一直線に対応しているわけでもない。


 私はまだ純粋で、何でもない存在だ。

 全ての否定を掻き集めることで、初めて私の輪郭が浮き上がる。


 私はだれ?

 私はあいまいのなかに揺らぐ空虚。


 私は未知の意味をしらない。

 それこそが未知だから。


 でも知りたい。

 それこそが私だから。

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