第13話 テンプレートは突然に
「そこの奴!!今すぐ武器を置いてとまれ!!この夕暮れ時、【ファスタ】に何用か!!」
俺たちが町に近づくと、衛兵と思われる兵士に槍を向けられた。
そりゃまあ、そうなるな。
丸腰の男と美少女となんか浮いてる小さいのが徒歩で現れたんだから。
普通だったら辻馬車とか利用するはずだからね。
「すみません、怪しい者じゃないんです。」
自分で言っててなんだけど、自分を怪しい人物だって言う怪しい奴を見たことないな。
怪しい奴ほど怪しくないって言うのが相場だろうから。
「なら身分証を見せろ!!」
身分証って何ですか⁈
むしろそれが欲しいから街に入れてほしいんですけど⁈
さてどうしたものかな……証明する者なんて何にも持ってないんだけど……
「すみません……此処に来る途中でモンスターに襲われてしまって、その時にカバンを投げ捨てて逃げ出してきたんです。身分証はそのかばんの中で……」
「なら一人銀貨5枚だ。それで仮許可証を発行するから、3日以内に身分証の再発行をしてもらえ。準備できた場合は預かった銀貨は返金する。もし準備できなかったら……間者とみなして拘束させてもらう。」
あれか、パスポートのビザみたいなことか。
それの有効期限が3日と。
それにしても準備できなかった時のペナルティが重すぎないか?
まぁ、こういった世界だと仕方がないのかもしれないが。
「そうしますと、銀貨15枚でよろしいのですね。ただ、先ほども言いました通り、カバンに入っておりましたので、それも……」
俺が申し訳なさそうにそう告げると、衛兵は困ったような表情で頭をガシガシかいていた。
すると自分の胸元を少し漁ると、布袋を俺に投げてよこした。
受け取った時ジャラリと音が聞こえたので、おそらく貨幣だろう。
「そいつでここの支払いをしろ。こいつは貸しだ。必ず返しに来いよ。俺のなけなしの酒代なんだからよ。」
そう言うと衛兵はそっぽを向いた。
最初は頭堅そうと思ったけど、実はめっちゃいい人だったようだ。
人は見た目で判断したらだめだって話だな。
「分かった、必ず返しに来る。恩に着る。」
「おう。」
俺たちは衛兵に頭を下げて門を通してもらった。
そこでふと聞きそびれていたことに気が付いて、足を止めた。
「そうだ、忘れてたよ。俺はリクト。あんたの名前を教えてくれるか?返しに来るにしても、名前を知らなければ呼び出してもらえないからな。」
「俺は、ガルドスだ。まあ、だいたい此処にいるから問題ないとは思うがな。」
そう言うとガルドスはニヤリと笑って見せた。
おっさんの笑顔も悪くはないかもしれないな。
そうして俺たちは、街の中に入ることが出来た。
必ずこの恩は返さないといけないな。
それと、早く身分証を発行してもらわないとな。
ド定番は冒険者ギルドとか、何かしらのギルドか。
さっき聞いておけばよかったと少し後悔してしまった。
それから俺たちは街の大通りを歩いている。
まあ大体の施設は大通りにあるってのが相場だから、きっとすぐに見つかるはずだ。
なんて話を二人としていたら、少し先に大きな堅牢そうな建物が目に留まった。
看板や旗がぶら下がっていた。
剣と盾が描かれており、中心には鷹?のような動物も描かれていた。
「あれは何だ?」
「あれがお目当ての
そうだった、ここにナビゲーターがいたんじゃないか。
最初から教えてくれと思うんだが……多分リリーは教えなかったと思う。
これも旅の醍醐味だと言って……
「
「そうよ?
この世界では冒険者ではなく、
まあ、冒険者だといろいろなところに移動してってイメージだけど、
まあ、どちらにしろ身分証が発行されればそれでいいんだけど。
大きな入り口は扉というより門だな。
大きさ的には3mくらいか?木の扉に鉄で補強している感じだな。
そもそもこんなにでかい扉っているんだろうか?
普通に考えて2mもあれば事足りるんじゃないか?って思うんだけど……って俺が間違ってた。
中をそっと覗くと、多種多様な生物?がそろっていた。
室内も天井高になっていて、おそらく5mオーバーくらいはあるかもしれないな。
へぇ~、中に酒場も併設されているのか。
右側に酒場、中央に広場なのかベンチやらテーブルやらが並べれれているな。
何か話し合ってるやつらもいるが、ここからは聞き取れない。
そのど真ん中の柱には掲示板のようなものがかけられている。
そこに紙が貼りつけられているから、おそらくあれがクエストボードとか言われる奴団だろうな。
左手はカウンターが並んでいるから、あっちが受付とかの場所か。
って、俺なんかこの世界の文字が読めるんだが、どうしてだ?
「陸人、もしかして文字が読めるの気になってた?」
「リリーは俺の心でも読めるのか?」
俺の疑問をさも当然のようにしてニヤついているリリーをデコピンで黙らせる。
「いったいじゃないのよ!!私のプリティーフェイスに傷がつくじゃない!!」
「で、だいたいは察しがついたから問題ない。」
おそらく転移特典って奴だろう?
普通に考えてこいつらの言葉が分かる時点でおかしいんだし。
文字が読めるのも納得できる。
それにインベントリって言う収納スキルも持ってるんだから言わずもがな。
「そう言えば、インベントリって便利なものがあるのに、なんでアイテムバックなんてものを配ったんだ?」
「それはね、転移者のインベントリって本人しか開けないのよ。だからアイテムバックに詰めて配布したの。まあ、陸人は受け取る前に転移させられちゃったんだけどね。」
やっぱりあのくそ上司腹立つわ!!
まあ、いまさら言っても始まらないんだが……
とりあえずさっさと登録を済ませて身分証を準備しないとな。
俺たちはでかい入り口をくぐりギルド内に入っていく。
床は石造りで、こちらも堅牢そうだ。
ちょっとしたことではびくともしない……はずだ。
「あ、すいません。
俺は総合案内とかかれたカウンターにいる職員と思しき女性に声をかけた。
耳が少し出るくらいにカットされた金髪ボブヘアの女性で、知的なメガネが印象的だった。
話すまでは……
「あらいらっしゃい!!」
どう聞いてもだみ声だ……
むしろよくよく見るとのどぼとけもある……
女装男子かよ!!
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