第4話 どうしろって言うんだよこれ……

「お、怒らない?」


 上目遣いでかつ涙目で懇願するリリー。

 うん、可愛いっちゃ可愛いんだが、今ここでそれを言うと調子付くのが目に見えているから絶対言わない。


「えっとね……実は……神のリソース使い込んじゃった。」


 てへぺろ的に舌を出して苦笑いを浮かべるリリーに、呆れて声も出なかった。

 いったい何にそのリソースを突っ込んだって言う……ん……だってまさか……

 多分俺の顔は青ざめていたのだろうな。

 俺の顔を見てリリーも顔を青ざめさせていた。


「なぁ、リリーさんや……その神のリソースを最後に使ったのはいつだい?」

「えっと、ちょっと前かな?」


 二人とも返答がものすごくぎこちなかった。

 うん、答え何て見えている。

 わかり切っている。

 うん、現実逃避してもいいよな?


「そっかぁ~。じゃあ、誰に使ったのかなぁ?」

「それはもちろん……あなた……」


 ですよねぇ~~~~~!!

 もうさ、どう見ても人外な〝丈夫な身体〟だもんね。

 むしろもっと違うことに使えばよかったんじゃねぇ~の!?

 例えばバランスの崩れて暴走しているこの世界を調整するとかさ!!


 もう頭が痛くなってきた……って頭痛はするんだな……


「で、他には?」

「えぇっと……魔王が……復活しそうです!!」


 はいアウト~~~!!

 全く持ってアウト~~~!!

 どう考えても厄介事以外ありえないでしょこれ!!

 絶対俺に退治しろなんて話持ってくるんじゃないか⁈


「ところでリリーさんや、その魔王はどうするんだい?」

「基本は勇者召喚とかするんだけど、その時神のリソースを使ってスキルとかを付与するんだよね。」


 つまりあれか、今勇者召喚しても勇者の称号を持ったただの一般人が呼ばれちゃうってやつじゃねぇのか⁈

 絶対ダメだろ⁈


「もう面倒だから単調直入に聞くけど、どうやったらリリーの神のリソースを回復させられるんだ?」

「手っ取り早いのは……陸人を吸収する事?」


 何でそこ疑問系なんだよ……しかも俺の死亡確定でもリソース回収は不確定。

 割に合わなさすぎる。


「他には?」

「多分だけど、リソースバランスが崩れたからダンジョンの活性化やモンスターの狂暴化が進むはず。それを倒して回収するのが確実かな。特にダンジョン攻略してダンジョンコアを吸収すれば一気に回復が進むはずよ。」


 つまりだ、俺の死亡を回避するにはこの世界を回ってダンジョン潰しまくって、モンスター狩りまくれってことか……

 このままいくとついでに魔王討伐依頼まで来そうだな。


 リリーは少し元気を取り戻したのか、俺の返答を待つようにくるくると飛び回っていた。

 俺が考え事をしているときに、何度か下からのぞき込む仕草は可愛いけど……

 考えがまとまらない!!


「つまりだ、俺がその回収をして回らなくちゃならないってことか?」

「別に陸人がしなくてもいいんだよ?私が回収できればそれでいいんだし。」


 何だよ、それなら他のやつらに押し付けてしまってもいいわけか。


「ただリソース回収には20年くらいかかると思うけど……魔王はあと5年もしないうちに復活するし……間に合わない的な?」


 クッソが!!全く間に合わないじゃないか!!

 どうすんだよこれ!!

 


 落ち着け俺……そう、慌てても仕方がない。

 とりあえず、事の整理だ。


 ①俺を助けるためにリリーが神のリソースを使い切る

 ②地球の神のせいでこの世界のリソースが暴走中

 ③魔王が復活しそう

 ④魔物とダンジョンが活性化

 ⑤勇者召喚用の神のリソースが枯渇

 ⑥リソース回収するにはダンジョンコアの吸収が必要

 ⑦期限はあと5年


 こんなところか。

 あと5年以内にリリーの神のリソースを回収し終えないと世界が魔王の侵略をうけるってことなんだな。

 しかも地球には戻れないから、この世界で生きるためには魔王の復活は断固阻止しなくてはいけないし、この情報を知っているのは現状俺だけと。

 さらにだ、もしこれを現地人に話したとて誰も信じる奴がいないってことだ。

 つまり俺が動かないといけない状況……


 此処まで考えて、俺は深いため息をつくしかなかった。

 かってにつれてこられた挙句、死にかけて、しかも半強制的に世界の救済をしなくてはならない。

 しかも時間制限付きって……どう考えてもブラック企業……

 俺ってこの世界にきても社畜人間になる運命らしいな。


「分かった。俺が何とかするしかないんなら、動くとする。その代わりと言っちゃなんだが、サポートくらいは頼むぞ?なんせ俺はこの世界を知らないんだからさ。」

「まっかせなさい!!なんせ私はこの世界の神様なのですから!!」


 つつましやかな胸をグイっと張りだして、どんと胸を叩くリリー。

 つい俺は生温かな目を向けてしまった。


 とまあ、そんなこんなで俺のこの世界での方向性は決まったものの、差し当たって今どうするかってことなんだが……

 とりあえずこの森から出ないことには始まらない。


「とりあえずリリー。この森を出たいんだが、道案内を頼めるか?」

「いいわよ。で、どの地域を目指すの?ここから東の魔法王国【ミッシア】。西の技術帝国【ガルテッツァ】。南の神聖国【ルミナリア】。そして北にある元魔王国【ファンダルシア】。おそらく地球の神から3地域の話は受けたと思うけど、元魔王国【ファンダルシア】については触れられてないはずよね?」


 確かにそんな名前の地域については話を聞いていない。

 って言うよりも、地域の名前すら聞いていないんだが……本当にあの神様はやる気があったんだろうか。

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