手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!!
華音 楓
第1章 絶望からの……
第1話 落下は突然に
広い空……
上を見れば眩しい太陽……
下を見れば広がる雲の絨毯……
なんで俺がこんなところにいるのかって?
それは俺も聞きたい。
「あんのくそやろ~~~~~~~~~!!絶対覚えてろよぉおおおおおおおおおおおおお!!」
俺は絶賛パラシュート無しのスカイダイビング中だ。
なんでこんなことになったんだ!!
くそったれが!!
なんで俺の人生はこうも落下が付きまとうんだよ!!
あれはこの状況になる少し前の事だった。
俺は間違いなくビルから飛び降りた。
この世界がもう嫌になって、何も考えられなくなったからだ。
俺こと
理由は簡単だ。
人生に絶望してしまったから。
何をやってもうまくいかない。
それなのにノルマは次々とやってきて、気が付けばこの年だ……
今日だってそうだ。
あの上司のしりぬぐいを必死でやったのに、責任を全て俺に押し付けやがった。
周りのやつらも、俺に白い眼を向けてきた。
まさに触らぬ神に祟りなし。
俺はいけにえにされたんだ。
そして上司から浴びせられる罵声……
「お前がもたもた修正なんかしているせいで、俺が専務からお𠮟りを受けただろうが!!どう責任取るつもりだ⁈え⁈ほらなんとか言え!!せめてわびの言葉も出ないのかよ、使えないな!!」
フロア全体に響くような声で俺をなじる上司。
それから聞くに堪えないような罵声が小一時間続いた。
もちろん助ける奴なんて誰もいない。
俺の身代わりになろうなんて思いうやつがいるはずもない。
それだけこの会社は腐ってしまったんだ。
俺が新入社員だったころの役付きは、それこそ理想の上司像だった。
俺たち新人がミスをしても、上司たちが矢面に立って頭を下げてくれた。
それが申し訳なくて何度も自分が頭を下げるって言いに行ったけど、帰ってくる言葉はきまって『部下の責任を取るのが俺たち上司の仕事だ。もし本当に頭を下げたいって思いうなら、きちんと仕事を覚えてお前が俺より偉くなれ!!そしたらお前が俺の代わりに頭を下げてくれ。』そう言って笑っていた。
だが、その上司はこの会社から去ってしまった。
今から思えば権力闘争に負けてしまったんだろうな。
そのころから俺たちが頼りにしていた上司が数名退職していった。
それからこの会社が徐々におかしくなっていった。
上司へのごますりが当たり前。
仕事が出来る奴ほど苦労を背負わされる。
〝チームプレー〟とはよく言ったものだ……確かにチームとしての仕事量は間違いなくこなされていく。
だがそれは要領よく仕事が出来る人間の犠牲の上に成り立っていた。
まさしく〝
そして俺もその波にのまれていった。
なまじ作業が人よりも早くできるものだから、手が空いているなら手伝えとばかりに、どんどん仕事を押し付けられる。
どう見てもそこでサボっている奴の仕事すら回ってくる。
そいつはと言うと、あのくそ上司と談笑中だ。
今度一緒にゴルフに行くとか……ふざけんな!!
結果俺は上司のサンドバックとなり、ボロクソに言われるだけ言われ……
心が折れた……
今回の上司のミスによって発生した損失を俺の責任にされ、その補填をするように迫られた。
入社時に書かされた誓約書を盾にして。
〝故意による損失はその責任を負い、損失額の弁済をする〟
背任行為ならまだわかる。
だが俺はそんなことなどしていない。
少しでも損失を減らせるようにと、関係各所に頭を下げて回った。
場所によっては罵声を浴びせられた。
それでも俺は頭を下げ続けた。
土下座だってなんだってやった。
文字通り、足蹴にされたことはしょっちゅうだ。
それでもそれで相手の溜飲が下がるのであればと思って耐えに耐えた。
だが返ってきたのはこの仕打ち……
もう、どうでもよくなった。
上司の説教が終わり、俺は席に着くことなくそのまま階段を上がっていた。
何も考える気力も沸かず……ただそこに行けば楽になれるって漠然と思っていた。
屋上に上がると、すがすがしい夏空が広がっていた。
真夏ともあり、太陽が痛いくらいに照り付ける。
ジワリとの身体に汗が湧き、シャツがぺたりと張り付く。
ふらふらとした足取りで、俺は鉄柵を超える。
思ったよりも躊躇はなかった。
踏み出した一歩は宙をかけ、ふわりと身体が浮き、そのまま自由落下を始めた。
迫りくる地面。
恐怖心はないが、後悔と言って良いのか分からないが、とある思いが頭をよぎる。
〝もう少し自由に生きたかったな〟と。
おそらくこれが走馬灯だったんだろうな。
すべてがスローモーションに見えた。
数秒も経っていなかったのに、いろいろなことを考えさせられた。
そしてあと少しで地面に衝突するというところで、俺は光の渦に巻き込まれることになった。
縦のトンネルと言えばいいのだろうか、どこまでも続くように思われるトンネルを自由落下のまま俺は突き進むことになった。
ただ、永遠と思われるこのトンネルはついに終わりを迎えた。
「いでぇ!!」
俺はウォータースライダーを頭から滑っていたように地面にダイブ。
そのまま地面……床?にぶつかった。
どの位滑ったのかは分からないけど、ズザザザザ~~~って効果音が付くんじゃないかって程、滑ってしまった。
でもケガ一つないかったのが、不幸中の幸いかもしれない。
周りを見渡すと、そこは真っ白な神殿だった。
中世の建造物よろしく、荘厳な雰囲気を漂わせる。
ステンドグラスのようなものから降り注ぐ光は美的センス皆無の俺からしても美しい……そう思わせるものだった。
さすがにこのままここにいても仕方がないと思い立ち上がろうとした時、遠くに何か光のようなものが見えた。
その光がやむと、俺の他に一人の人間が姿を現した。
ただその人は俺と違って肌は黒く、ほっそりとした男性だった。
上半身は裸で、ハーフパンツをはき、足元はビーチサンダル。
どう見ても海水浴とか川遊びとか、そんな水場にいたんじゃないかって格好だった。
その人も良く分からないようで、キョロキョロと周りを見渡していた。
それから俺を発見すると、恐る恐る……ってくるのかと思ったら、猛ダッシュでこっちに向かって走ってきた。
駆け寄ってくる最中も、何か言っているけど……おそらく英語だと思うんだが、英語がからっきしの俺からすれば何を言っているのかよくわからなかった。
多分だけど、ここ何処?みたいな感じだと思うんだが……
すまん、俺も分からんし、英語も分からん。
こうなるんだったら駅前留学でもしておけばよかったかな?
その後も次々と光っては人が現れた。
その人種も多種多様で、俺と同じ日本人もちらほら姿を現した。
そしてその中にあのくそ上司が含まれていた。
なんでここまで来てお前に会うんだよ!!
俺はここにはいない神を恨みたくなってしまった。
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