双人二分の二

@ta-ru0370

忘れる思い出

ほんの興味本位なのだろう。そいつは小学3年の時に、誰ともしゃべらず窓から校庭を見下ろしているだけのおれに話しかけてきた。 『なーんも変わらない校庭を毎日見ていて楽しいの?』 おれは答えた 『変わらないからいいんだよ』 そいつは不思議そうな顔をして首をかしげている。とりあえず名乗るのが礼儀だろうと自己紹介を始めた 「おれは日一花(ひいばな)ソウ。お前の名前は?」 ぼくの名前は 「ジンだよ。基岬(きみさき)ジン。名字のキと名前のジンから取って奇人って呼んでもいいよ」 ソウ「それだと誤解を生むじゃないか名前でいいだろ別に」こうしておれたちの関係は始まった。


ジンとはそれからよく喋るようになっていった。というより、ジンがしつこく話しかけてくる。正直、ジンとはあまり関係をもちたくはない。そもそも、今まで誰とも関わってこなかったのには原因がある。なのでジンに自分のことを諦めてもらいたくて話すことにした。それは、オレがまだ幼く言葉もまともに話せない時に母親が死に、父親一人でオレを育ててくれたことにある。ある時、父の前で友達と何気ない会話をした。そしたら父は 「ごめんな。」 と一言だけ放った。今まで母と元々共働きでなんとか家計を支えてきたが、母が死んでからは精神や金銭の面で生活が苦しくなった。そう、友達からしたら何気ないことだが自分たちからしたら、何・気・な・くなどないことだったのだ。それからというもの、厳しい中自分を育てくれている父を少しでも傷つけさせないため、ここまで人間関係を断ってきた。 ソウ「だからジンとも仲良くなどはできない。」 そう言うとジンは初めて険しい真剣な顔で ジン「それがどうしたんだよ!ソウのパパはソウが笑顔になれるよう頑張ってるのに、今のソウはどこか寂しい顔をしてるぞ?親不孝になっていることに気づけよ...」 なぜかジンは泣きそうな顔になっていた。その日の夕暮れは長く感じた。

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