5 一緒のお昼ご飯

 ある程度移動してからあるまに聞いた。


「んでだ」

「なーに?」

「なんで急にお昼誘った?」

「え…嫌だった…ですか?」

「いや、急だったから意外だったのと…よく俺のクラス分かったね、教えてないはずなんだけど」

「ま、まあそれはそれということで、食べよ!」


 学校の中であまり人気ひとけのない場所であるまと一緒にご飯を食べている。なぜ人気がない場所かって?、堂々と一緒に食べてたら後々何言われるか分かったもんじゃないからね。あとこの関係性は、人に話されると面倒事になりかねないというのがある。


「あるまはお弁当か」

「あれ、みり先輩は違うの?」

「…周りに誰も居ない時は先輩つけなくてもいいよ、なんかむず痒いと言うか」

「わかった〜、みり〜」

「うーん…まあいいや、僕は親が仕事の日とそうじゃない日があるから、それによって弁当ある日のない日があって、今日はそのない日ってわけ」

「ふーん…なるほどね」


 なにか企んでるような顔をしているが、知らないフリをしておこう。


「んーじゃあこの唐揚げあげる、はい」

「あーんの体勢で、唐揚げをこっちに向けてくるんじゃありません、自分で食べるから」

「…箸、私の分しか無いけど?」

「ありがたくいただきます」

「はい、あーん」

「それ言う必要あるか?」

「ある!」


 そんな自信満々に言われたら言い返せないじゃないか。にしても…


「栄養バランスがしっかり考えられてるように見える…」

「あ、わかる?」

「すごいと思う、そういうところまでしっかり考えれてて」


 あるまって、俺の思った以上にハイスペックなのかもしれん。


「まあ考えるようになったのにも、これまで色々あったからね、それまでは何も出来なかったし」

「色々考えるようになった出来事があったってことか、目標があるっていいものやね」

「うーん…まあいいや」

「ん、なになに、なにかいいたげだけど」

「これでも食べてて!」

「ムグ」


 口に唐揚げを押し当てられた、美味い。


 教室に帰ってから…やっぱり視線を感じる。


「あの宵闇さんと仲良く話してる…」

「どういう関係性…」

「羨ましい…」


 なんだかヒソヒソ会話で済まない、こちらにも話している声が聞こえてくる。


「いやぁまさか冴えない陰キャの藍星が、あの絶世の美女の宵闇と仲が良かったとは」

「うるさいわ、というかお前が"絶世の美女"という表現を使ったのなんか違和感」

「別にどう表現しようが自由だろ?、というかそういうところから人を判断するのはよろしくないぞー」

「別にいいじゃないか、まああるまとは昔縁があってな、色々話しているというわけだ」


 教室に帰るなり柊が話しかけてきた。ちなみに俺は陰キャだがこいつは陰キャじゃないどっちかというと陽キャ寄りの人間だ。なぜ俺にずっと構うのかは知らないが。


「幼馴染というわけか…」

「ずるいぞそのポジション」

「俺もあんな可愛いこと幼馴染になりたかった…」


 なんだかまた周りから妬みの声が聞こえてくる。


「なんかみんなギラギラしてるというか、敵意の向けられ方が尋常じゃないんだけど」

「まあそういうこともあるだろ、というかみんなそんなに彼女とか欲しいの?」

「お前はいいよな、割とモテるタイプだし、相手には苦労しなさそうで」

「別にそういうわけでは無いよ?、あんま知らない人から頻繁に話しかけられるから対応が…と思ったりしてる、まあ嫌ってわけでもないがな!」

「やっぱうるさい黙ってろ」

「余りにも対応がひどくないかな?、藍星殿よ」

「その呼び方やめろ」


 どうやらモテてる人間にも別で苦労があるみたいだ。


「ふーやっと授業終わり〜、疲れた〜今日も早いとこ帰って…」

「せんぱーい、一緒に帰りましょー」

「あ、ハイ」


 そんな大っぴらにいうと視線が…もういいや。


「はいはい帰ろ帰ろ」

「なんかリアクション薄くないですかー?」

「お前はおったい俺に何を求めているんだ」

「冗談ですよ、じゃあ行きましょー」


 一日の授業が終わってもこんな元気で居られるその精神は見習いたいものだ。


「………」

「ん、どうしたの?、月乃」

「あ、いや、なんでもないよ、大丈夫」


 その後ろ、あるまと帰る姿を見てなにか複雑な心境を抱える月乃みちるの姿があった。


「なんかやっぱりお前といると視線がやばいんだけど」

「つまり?」

「なんか周りの男子からものすごい敵意向けられてるように感じる」

「うーん、なんでだろ…わかんない!」

「あらそう」


 多分あるまが可愛くて美人だから、多分好きって人も多いんだろうな。告白しても全員断ってるらしいし。そんな人と仲良く話してたらやっかみも受けるか?、どうやら本人に自覚は無いみたいだが。


「ちょっとみりのお母さんと話してくる〜」

「あんま迷惑かけんなよー」


 やっとゆったり出来る、思えば数日前はなんだかおかしくなってしまったようにこの世に絶望していたような気がする。あるまと話したことによって、段々と普通に戻っていけたような、また振り切れたかと言われるとそうじゃないけど、前より楽になったし、支えてくれたあるまには感謝しないとな…でもやっぱりちょっと解せない部分もある。なぜみちるは突然自分を振ったのだろうか、前日の夜まで普通に話してたし、それまで特に変わった様子もなかった。それが翌日急にそういう話になったのだ。なにか別の人の思惑も…


「話しおわったよー、って散らかってるね部屋」

「いきなりノックもせずに開けてこないでくれよ、めっちゃビビった」

「ノックはしたよ?、ただ返答がなかったから寝てるのかなーって」


 どうやら考え事に没頭して声が届いていなかったようだ。


「んで、何話してたの?」

「それは明日のお楽しみってわけで〜」


 どうやら教えてはくれないようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る