2 失恋と現実逃避②

「そろそろご飯よ、起きてきなさい」


 目が覚めてスマホを見ると時刻は19:45、


「午後7時45分…結構経ってるな、こんな寝て夜寝られるかなぁ…」


 俺の家はお父さんが単身赴任で居なくて、家ではお母さんと二人で暮らしている。

 お母さんも仕事で家を開ける時間が多く、家に居ても掃除洗濯食事の用意やらで忙しそうにしている。自分にはなにも出来ないんだから、せめてこれ以上負担はかけさせられないなと思って、悲しいな、つらいなと思うことがあっても、自分の中に留めていた。


 晩ご飯を食べて、お風呂に入って、課題を終わらせて、なにも変わりのない一日…学校サボったから変わりのないというわけではないか、どの道、いいものではなかったけど…さすがに明日は行かないとまずいか…さすがにひいらぎにああ言った手前…休めないよなぁ、すごく行きたくない。自分がうまくやってたらこんなことで苦しむ必要もなかったはずなのに…なんて言ったところで変わりはしないのに、なぜ色々言ってしまうのだろう…もういいや、寝よう。


 〜〜〜


「なんで、起きなきゃいけないんだろう、ずっと寝られたら、辛いこともなにもないのに」


 目が覚めてしまった、仕方がないので朝ご飯を食べ、身支度を整え学校に向かう、今日こそは絶対に。


「はぁ、学校なんて無くなってしまえばいいのに」


 子供じみた戯言を言いながら学校に着く、ドアの前でちょっと立ち止まってから開ける。やっぱり居た、もう彼女から元カノになってしまったあの子、"月乃つきのみちる"だ。


「なんで目についちゃうのかな、」


 あの頃に楽しかった頃の記憶を。忘れたくても忘れられないような記憶を。


「どうしたんだ?」


 後ろから声をかけてきたのは"ひいらぎつとむ"、俺の数少ない友達だ、


「いや、特になんでもない」

「そうか?、俺には月乃を見て、なにか動揺しているように見えたんだが、もしかしてまた喧嘩でもしたのか?、最近あんまりお前が月乃と話してるの見ないぞ」

「気の所為だ」

「ま、なにかあったのなら、また相談しろよな!」


 ごめんな柊、今はそれも出来る余裕もほとんど無いんだ。こんなに学校に居づらいと思ったのは初めてだ。早くこの場から居なくなってしまいたい。こんな気持で居るから、授業もほとんど耳に入らない、休み時間は机に突っ伏して寝る、ただそれだけの時間、昼ご飯の弁当もほとんど味がしない。ここに居るだけで、胸が苦しい。


「なあ、やっぱり様子がおかしいぞ」

「…気の所為ということで済ましておいてくれないか?」

「正直、今の藍星は見てられないと言うか、ずっと一人で何かを抱え込んでいるように見えるぞ、一人で抱え込んだところでなにも良いこと無いんだからな」

「そっか、なんだかすまないな」

「別に、いいってことよ」


 心配してくれることはありがたい、だけど、こんなこと話せやしない。一人で抱え込んでも良いことがないのは確かだろう。ただこんなことを相談しても、自分にとって良い結果になるとは到底思えない。自分の苦しみは、自分にしかわからない。だから抱え込むしか無いんだよ。これまでもそうやって生きてきた。これからもそのやり方を変える気はない。


 やっと授業が終わった。もう、こんな居心地の悪いところに長居してもいいことなんてないから、とっとと帰ることにしよう。


「…待って」


 遠くからだれか、女子の声がしたような気がした、ただ自分のことでは無いだろうと足を止めることはしなかった。


「ねぇ待って」


 …早く気づいてあげればいいのに


「ねぇ待ってってば!」


 制服を掴まれてやっと自分のことだと気づいて止まる。後ろを振り向いたら、スタイルの良い、美少女というにふさわしい子がそこに居た。


「一体、俺になんの用ですか」

「月乃さんと…別れたって本当なの?」

「なんでそんなことを、あなたには関係無いでしょう、自分もあまり暇ではないので、帰りますね」

「あ、ちょっと!」


 今は、誰とも話したくないのだ、ましてや、もう別れてしまった彼女についての話なんて。そうして家まで走って帰った。


「なんだったんだあの人は…」


 どこかで見たことのある、会ったことのあるような人だけど、ちょっと…いや俺の知ってる人とはかなり違っているから、おそらく別人だろうと判断した。きっと月乃の周りの友達かなにかだろう。なんでそんな人が話を聞きに…どうせなんで別れたのかとか聞きに…いや仮に月乃の友達なのだとしたら俺にわざわざ聞きに来るか?、それなら月乃に聞けば良いこと、第一俺も、なんで別れようと言われたのかわからないし。


「みりー、お客さんよー」


 こんな時に誰だよ…一人になりたい時だってのに


「足早すぎるでしょ…ハァ…ハァ…」


 !?!?、さっきのやつじゃないか。なんで家がわかる、家の場所を教えた記憶はないぞ。


「なんで俺の家を知っている、教えた覚えは無いぞ?」

「だって…ハァ…ハァ、私…ハァ」

「ちょっとお茶出すから落ち着いてから話してくれ」


 お茶を飲んで、落ち着いたら話を始めた。


「なんで話聞かずにいきなり逃げたの?」

「面識のない人がいきなり話しかけてきたら逃げるでしょう」

「私のこと、覚えて…ないの?」

「見覚えは…ない」

「ひどい…私は小3の時にあなたの隣の家に引っ越してきた、"宵闇あるま"よ!」


 !!!

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