おやすみ映画館

結音(Yuine)

 夜、川の字に敷かれた布団に潜って

 聴く

 母の語り聞かせが

 ボクは大好きだった。



 文字を読んでも、景色が浮かんで来ないボクだから、

 母は語って聞かせてくれた。


 ボクのために、

 ボクだけのために。


 その口調は軽快で

 心地よく、

 想像することが苦手なボクも

 なんだか楽しくなってきて。


 わくわくしていた。

 笑っていた。

 もう一度聞きたいと、ねだっていた。




 大きくなって、

 母とは別の部屋で寝るようになったけど。

 夜、布団に入ると思い出す。

 母が語り聞かせてくれた物語。



 ♪

 桃は流れて どんぶらこ

 甘い桃なら こっちさ来い

 苦い桃なら あっち行け

 ♪










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