NTRない話
@gfdlove
第1話 よくあるパートでの飲み会の話
妻が帰って来ない・・・
今日はパートでの飲み会があるって聞いていた。だから今年で5歳になる娘の桜花と一緒に留守番をするために仕事を早めに上がって、妻を送り出した。
「ずっと断っていたけれど、さすがに今回は断りづらくて・・・あなた、ごめんね。
7時から2時間くらいだから、終わったらLIMEするね。」
「人付き合いも大事だからさ、しょうがないよ。桜、気にしないで楽しんで来て。俺は桜花と一緒にご飯食べて、待ってるから大丈夫。
なー、桜花?」
「んー、ママが良いーな!」
「えー、一緒にママが作ってくれたハンバーグ食べて、ラリキュア見よーぜー?」
「やーだ〜!ママが良いもんっ!」
「桜花ごめんね。ママすぐに帰ってくるから。だからパパと一緒にご飯食べて、お家で待っててくれる?」
「やだー!ママと一緒にお風呂入るー!」
「桜花、じゃあお風呂はママと一緒に入ろう?ほら、この前見たいって言ってたラリキュアの映画見たらさ、ママ帰ってくるから。だからパパと一緒に見よーぜ〜?」
俺は後ろから桜花を抱き締めて、桜に目で合図を送る。
「本当にごめんね、桜花。すぐ帰ってくるからね〜!そしたら一緒にお風呂に入ろうねー?
ごめんね、陽太。じゃあ、いってきます!」
ガチャン。
玄関の扉が閉まったあとは・・・桜花とのタイマン勝負だった。
ずっとママが良い、ママじゃないとイヤ〜と騒ぐ桜花をひたすら宥めて、何とかご飯を食べ終わった時には8時を過ぎていた。
それからラリキュアの映画を、きゃーきゃー騒ぐ桜花と一緒になって見る。
あー、本当に桜には感謝しなきゃな〜ってマジで実感した。うん、本当1人じゃ無理だよな〜。少しでも早く帰れるようにもっと仕事頑張ろーって考えさせてくれた時間だった。
映画も終盤に入って、集中して見始めた桜花に安心して時計に目をやるともう9時を過ぎていた。
そろそろかなーなんて思ってLIMEを桜に送ってみたけど、全然返信が無くて・・・
桜の性格なら、そもそも二次会には参加しないだろうし・・・参加するにしたって必ず連絡を入れてくる。
そんな風に色々考えて不安に思い始めた頃、映画が終わってしまった。
「ねー、パパー?まだママ帰って来ないのー?」
桜花が俺に尋ねてくる。
うん、決めた。飲み会の場所は聞いている。駅前の居酒屋。ウチから歩いて10分くらい。
桜花と一緒に迎えに行こう。
今から歩いて行けば9時半には着くだろ。
「桜花〜、今からパパと一緒にママを迎えに行ってさ、ママをびっくりさせてやろーぜ?」
「うんっ!いいよー!!ママ喜んでくれるかなー?」
「あったり前だろ〜!明日土曜日だし、帰りにアイス買って帰ろうぜー」
「うん、やったー!じゃあ早く行こ〜」
サッと上着を桜花に羽織らせて、すぐに家を出た。歩き始めて、すぐにやっぱりだんだんと不安が増してきて・・
桜花を肩車して走った。
「ほら、桜花〜パパ早いだろ〜?」
「おー!!パパすごーい!」
やばいっ、いくら5歳とはいえ肩車しながら走るのは無理があったか。すげー息が切れる・・・
でも不安の方が強くて、必死になって走った。明日休みだから・・・ゆっくりするのは明日で良いよなっ!
五分くらい走って、飲み会をしているお店が入っているビルが見えてきた。
ビルの前にタクシーが止まってる。すげー嫌な予感がして・・・
もうちょっとだからと安心して、ちょっと歩き始めた足にもう一度力を込めて、本気で走った。
「すみませーん!冬木桜の夫ですけどー」
走りながら叫ぶ。
全然人違いだったら、それならそれで全然構わない。
「ママー、むかえにきたよー」
桜花も大きな声で桜を呼ぶ。
「ねぇっ、あれって冬木さんの旦那さんじゃないの?」
「あー、そうねー。肩車してる子は桜花ちゃんだわ。」
ガヤガヤと騒ぐ集団。俺の声に気付いて、こちらを見てる。
ハア・・・ハア・・・
着いた・・・
タクシーの正面に立って、桜花を降ろして・・
「すみません。冬木桜の夫ですけど・・・桜は・・・」
パート仲間のおばさま達が口ぐちに話しかけてきてくれる。
「あー、良かったわー。冬木さん飲み過ぎちゃったみたいでね、アルバイトの若い子が送って行ってあげようとしてたのよー」
「葛馬君〜!冬木さんの旦那さんが迎えに来てくれたから、もう大丈夫よー」
「えっ・・・!?」
タクシーの中から若い男の声がした。
急いで後部座席に向かうと、チャラそうな男とその男に寄りかかって爆睡してしまっている桜がいた・・・
「あー、すみませんねー!私、冬木桜の夫なんですけど、迎えにきました。もう大丈夫なんで、葛馬さんは二次会に行って頂いて大丈夫ですよー。ありがとうございましたー」
思いっきり睨んでやった。ウチの奥さんに手を出そうとしてんじゃねーぞ。
そのまま桜を抱えるようにしてタクシーから出した。そして・・・
おっしっ!! 腰にあらん限りの力を込めて、桜をおんぶした。
「あらー、冬木さん羨ましいわー。いいわねー!」
「あら、本当!私なんて夫におんぶして貰った事なんてないわよー」
「旦那さん、お家は近いの?」
「ママー、赤ちゃんみたいー!」
キャーキャー騒ぐおばさま達と桜花に、ニッコリ笑って。
「最愛の妻ですから、こんなのヘッチャラですよー」
と笑って言ってやった。あとで桜はパートのおばさま達から色々と揶揄われると思うけど・・・
そのくらいは良いクスリだろ。
「じゃあ私達は帰りますんで、二次会行くんでしたら楽しんで下さいね!ご迷惑をお掛けしましたー!」
「いえいえ、気をつけて帰って下さいねー!桜花ちゃんも、またね〜!」
「桜花ちゃん、パパとママが仲良しで良かったわねー!早く寝るのよ〜?」
「うんっ!ママもパパも大好きっ!!おやすみなさいっ!!」
桜花が元気よく返事をして、俺達家族は家に向かって歩きだした。
背中には桜、左手で桜花と手を繋いで・・・
ふと見上げると空には綺麗なまんまるお月さんが輝いていた。
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