第66話 前とは違う未来

 私がガウェイン殿下に勝利したあと、一悶着あったところへパーシヴァル殿下が現れると、驚愕の言葉を聞くことになった。


「お前の王位継承は剥奪されている」


 入学式で騒動を起こしたことが原因みたいだけど、ガウェイン殿下は剥奪のことを全く知らなかった。王位継承権がないにも関わらず、王家の威厳を振りかざすという愚行を犯したのだ。兄であるパーシヴァル殿下はそのことを見過ごさず、ありのまま国王陛下へ報告すると伝えると、ガウェイン殿下はその場に力なく崩れ落ちた。


 パーシヴァル殿下は、項垂れる弟を気遣うことなく私の下へ来て、片膝をつきながら緊張した面持ちで口を開いた。


「レイバック辺境伯令嬢、愚弟の犯したことをお詫びします。陛下へ今回の愚行を全て報告をし、速やかに処罰を下すことを約束します」


 私が返事をしようとすると、ファビオはそれを制してパーシヴァル殿下に向けて口を開いた。


「お義母様の逆鱗に触れない裁定を下してください。これ以上の失態を繰り返すと、流石に王家と辺境伯家の関係修復は、不可能になると心得るように」


 その表情は険しいもので、脅しとも言えるような言葉を投げかけていた。王家を相手にしても一歩も引かない態度は、とても勇ましく心強く思った。


「レイバック辺境伯令息の言葉を肝に銘じて、厳正な処罰を下すことを第一王子の名にかけて誓う。では、愚弟を王宮へ連行するので失礼します」


 パーシヴァル殿下は、ファビオの問いかけに答えたあと、厳しい表情のまま項垂れたままのガウェイン殿下の腕を掴んで立ち上がらせると、演習場を後にして王宮へと向かったの。


 2人の王子が演習場を去って行くと、叔母様が『パンパン』と手を叩いてから口を開いた。


「とんだ茶番があったが、武術の授業はこれで終わるぞ。生徒達は各教室へ戻れ。それからランベルトは、約束通りにこの学園から去るように」

「っ、ま、待ってくれ!」

「待てだと? 約束を違えると言うのか?


 ランベルトの言葉を聞いた瞬間、叔母様の雰囲気が一変して殺気にも近いオーラが溢れ出した。


「ひっ……」

「直ぐに学園を去れ。判ったな?」

「は、はひ……」


 叔母様の殺気を前に、逃げるように演習場から駆け出して行くランベルト。巻き戻る前には、Sクラスの教師として教鞭を取っていた男は、職を失う形で学園を去って行った。


 別邸に帰宅して着替えを済ませた後に『少し休む』とサンドラに伝える。ベットで横になるとゆっくりと目を瞑る。


(ガウェイン殿下が失脚したのなら、あの2人の諜略で私とファビオが殺されることは回避できたかな?)


 巻き戻ってからこれまでのことを振り返ると、前とは違う未来へ進んでいる実感が湧いた。すると、私の目から涙が溢れて頬を伝うのだった。


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